エバリスト・カリエゴ

  • 国書刊行会 (2002年2月1日発売)
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感想 : 3
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私はフィギュアスケートのファンなのですが、今季(2014年シーズン)「エバリスト・カバリエに捧ぐ」で滑っている選手がいるんですよ。
私にとってエバリスト・カバリエといえばボルヘスが書いていたけど読んでないという認識。
ではいい機会なので読んでみよう。

エバリスト・カバリエはブエノスアイレスのパレルモをほとんど出ず、29歳で夭折した詩人。語る世界では、薔薇色に塗られた扉の場末の酒場で男たちが踊り、そして短刀を持って男たちが闘う。

題名からはエバリスト・カバリエやその作品を解説しているようだが、内容はアルゼンチンの場末の様相とかタンゴの歴史とか先祖たちがどこから来たのかとかついてとか。
30ページ程度の作品を「私の作品としては長編だよ。30ページもあるからね」なんて言ってるボルヘスが、割とふつうに長文?書いています(笑)
違う国にロマンを感じながらパレルモに居続けたエバリスト・カリエゴを「自分のことを分かった一瞬間訪れ彼は本当のエバリスト・カリエゴになった」(かなり意訳)としたり、他の作品で読んだようなボルヘスの思考もみえる。

「短刀」「騎馬民族考」「場末の詩」などいくつかの章は、エバリスト・カバリエはあまり関係なくボルヘスの小説集に分類される。
タンゴは踊るための音楽だが、場末の売春外から生まれた(という説がある)から、当時は上流社会に受け入れられず、街の女たちは踊らず、街角で男たちが粋に踊っていた、としている。
ボルヘスはピアソラのタンゴはお気に召さなかったようですが、踊るための曲であり場末でナイフを持った男たちへのノスタルジーと、
ヨーロッパの哀愁が加わり音楽のための音楽となったピアソラのタンゴでは確かに好みの方向が違うのでしょうね。
以前読んだ何かの本でボルヘスが「私のこの作品を読むときは、タンゴの○○を聞きながら読んでね」と語っていたと思うのですが、それはピアソラだったか??作曲者名も曲名も短編名もちょっと探し出せない…。どなたかお分かりになる方教えてください。

さて、それを踏まえてこの曲で滑るフィギュアスケーターですが、本当に端正な滑りの選手なので、「場末の売春宿で生まれて粋な男同士が踊った」ものとはまたちょっと違うのかもしれないが(笑)。
https://www.youtube.com/watch?v=d8wgnA06frs#t=12

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人物
感想投稿日 : 2014年11月26日
読了日 : 2014年11月26日
本棚登録日 : 2014年11月26日

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