あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続

著者 :
  • KADOKAWA (2018年4月27日発売)
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感想 : 222
5

宮部みゆきのファンタジー時代小説、三島屋変調百物語の5冊目。「伍之続」という書き方が粋ですね。
第一期完結篇。

三島屋は、江戸は神田にある袋物屋。
姪のおちかは辛い事件の起きた故郷を離れて、こちらで働き、叔父の発案で風変わりな百物語を続けていました。
百物語は人々が集まって、怖い話不思議な話を一つずつ話すものですが。
三島屋の百物語は「黒白の間」で、何か話したいことがある人を招き、おちか一人が話を聞き、それを叔父にひと通り話した後は、「聞いて聞き捨て、話して話し捨て」が決まり。
ここからは、三島屋の次男・冨次郎が奉公先で怪我をして実家で療養中、隣で話を聞くことになります。

「開けずの間」
9人家族に訪れた思わぬ不幸。
家に戻された長姉は生き別れの我が子を思うあまり、恐ろしいものを家の一間に引き入れてしまう。
何かと引き換えに願いをかなえるという、引き換えとは。

「だんまり姫」
亡者を起こしてしまう「もんも声」を持つ、おせい。
出来るだけ口をきかず、耳の聞こえない夫婦に仕え、身振り手振りで意志を伝えることを覚えたら、お城からお呼びがかかった。
口をきかないお姫様の世話をすることになったおせい。やがて、お城で起きた悲劇を知ることに。
罪のないおせいや可愛らしい姿の面影がずっと消えません。

「面の家」
痩せて行儀の悪い娘・お種が突然、三島屋にやってきた。
なぜか性格の悪い方がいいと監視役に見込まれて、異様な面のある家に住み込んでいたという。
その面とは。

「あやかし草紙」
瓢箪古堂の若旦那・勘一が語る。
父が懇意にしていた浪人が破格の謝礼で請け負った写本。
そこには大きな秘密があった。

「金目の猫」
三島屋でふらふらしている次男・冨次郎は、一時奉公先から戻った長男・伊一郎と、幼い頃に経験した話をする。
冨次郎は近所にいる猫に情けをかけ、可愛がっていた。
伊一郎が見るところ、その猫の不思議な行動のわけは。

おちかが一歩を踏み出し、新たな門出へ。
若い娘がいつまでも立ち直れないのは悲し過ぎるが、えっ、百物語卒業? つまんな~い(笑)
冨次郎のお手並み拝見。
おちかの旦那さんもしっかりしてよっ(笑)

欲や情や行きがかりから、思わぬことに巻き込まれ翻弄される人の弱さ愚かさ必死さ。
辛い気持ちに寄り添い、心通ったひとときを思い、亡き人をしのび、妖しい出来事にも縁を感じる。
切なさと面白みとあたたかさ。
得難いシリーズです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2023年9月15日
読了日 : 2019年2月4日
本棚登録日 : 2019年1月31日

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