メイン州の田舎町。
海沿いにあり、別荘に来る人もいる。
一見、地味で平和で、そこには濃い人間模様がある。
大柄で変わり者のオリーヴ・キタリッッジは数学教師。
強烈な存在感がありますね。
13の短編のどこかに登場し、しだいに老いていきながら、町の出来事に関わり、時に揺り動かしていく。
オリーヴは何があっても自分が悪いとは思わない性格と言われる。
確かにそういう面もあるが、じつは自信満々というのではない。
夫ヘンリーは穏やかでいい人だが、いつしか心は離れがちに。
隣町にある薬局を経営する夫は、店員の若い女性に小さな救いを見いだす。
夫婦とも息子のクリストファーをとても愛しているのに、上手くいかない。
足の医者になったそのクリストファーが結婚する。最初の妻スザンヌは小柄で身綺麗で、何もかもわかったような顔つきの女性。
オリーヴは猛烈に反感を抱く。
息子夫婦は束縛から逃れるように遠いカリフォルニアに引っ越してしまうが、1年ほどで離婚に。
後に再婚した相手アニーはまた正反対で‥?
オリーヴ以上に大柄で、性格はいいようだが、父親の違う幼い子供を二人連れ、今度はクリストファーの子を宿している。ちょっと頭が弱そうなのだ。
クリストファーは最初の妻によっぽど懲りたのかという感じだが、家族を持って少しだけは母親に対する態度が変わっていく。
夫のヘンリーが倒れ、病院へ通うオリーヴ。
ちょっとしたことを共にする相手がいないことにしみじみと寂しくなる。
別荘地に住む老人ジャック・ケニソンが妻を亡くしたことを知る。
ウォーキングをする道でジャックが苦しんでいる所を助け、ほんの少しずつ接近していく。
不器用な老人同士のゆっくりしたつきあい。
それでも、ときめきはあるのだ‥
町で起きる事件もなかなかすごいんです‥
ちょっとしたモチーフの面白さ。
率直で猛烈なオリーヴは時には厳格な教師、時には頼りになる隣人、気さくな友達でもあります。
幾つかの別れに、胸に迫る哀歓。
年を取っていくことの悲哀と寂しさと、ささやかに訪れる静かな充実。
味わい深かったです。
作者は1956年、メイン州ポートランド生まれ。
2008年に発表した本作で翌年のピュリッツァー賞を受賞。
ニューヨーク在住。
- 感想投稿日 : 2011年9月4日
- 読了日 : 2011年9月3日
- 本棚登録日 : 2011年9月3日
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