0能者ミナト (メディアワークス文庫 は 2-1)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス (2011年2月25日発売)
3.74
  • (78)
  • (118)
  • (128)
  • (14)
  • (4)
本棚登録 : 1215
感想 : 108
3

「0能者ミナト」
科学が隆盛を極める時代の片隅にひっそり息づく異形のものたちがいた。それは怪異。怪異とは人の世の理から外れたものの総称。妖怪じみたものから念の淀みのようなものまで千差万別な異形なものに共通するのは、残虐であること。怪異は人の理解を超える力で人を喰い殺す。そんな怪異を倒せるものは法力僧、修験者だけではない。九条湊も異形を相手にする。しかし、彼は霊力、法力、神通力を使わない。彼が使うのは何なのか?


主人公は怪異を相手にする九条湊という男。彼は同じく異形を相手にする退魔師から零能者と揶揄されていた。しかし、彼は退魔師達が考えつかない手段で怪異を滅殺する。そんな彼の欠点は傍若無人で掴み所が無く飄々と毒舌を叩く所。そんな九条湊に助けられる山神沙耶と行動を供にすることになる赤羽ユウキは彼の欠点に悩まされ、振り回され、そして次第に慣れていく。


私はこの湊を知ったとき、八雲(「心霊探偵八雲」の主人公)に似ているなと思いました。この赤目の男は霊が見えるが、霊を滅却させる特殊な能力は無く、誰にも本心を見せずに飄々とした態度を保ち(しかし、なんだかんだで優しい一面を持つ)、それでも周りの影響を受けながら自分自身を成長させていく人物。さらに言ってしまうと、作品の表紙で描かれる八雲は美形で、文調から見ても恐らく美形と想像出来る立ち振る舞いと口調。そんな八雲の特徴を湊も備えているように思えます(恐らく湊も八雲と同様に自分で背負い続けている過去がありそうですが)。彼ら2人の違いを強いて挙げると、八雲は「下ネタ系の毒舌は吐かない」ということでしょうか。湊はバンバン吐いていきます、大人の毒舌を。


また、湊と八雲の事件の解決の仕方も似ています。2人とも特別な力で解決するのではなく、知力と洞察力で地道に解決策を見つけ、真相を明らかにしますが、湊はより狡賢い一面を持ち、どんどん相手を罠に嵌め、挑発して自分の範疇に周りを引き込んでいきます。そんな一面はダークヒーローのよう。


しかし、この「ミナトシリーズ」の肝はしっかりと練られた怪異の事件だと思います(まだ第1巻での感想ですが)。他の登場人物である山神沙耶と赤羽ユウキ、そして湊が挑む怪異が起こす事件は一見怪奇現象そのものですが、実は背景にはしっかり練られたものがあり、そこが面白い。


いざ第2巻へ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年9月23日
読了日 : 2012年9月22日
本棚登録日 : 2012年9月22日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする