公共圏/私的圏域の線引きが変遷する様相を、社会史的にまとめた一冊。「公共圏」を議論の主線として用いる一方で、対義語である「私的圏域」についての記載が分散しているので、ヒジョーに読みにくい。というかまだ1,2,5章しか読めていないのに、既に情報量が膨大なのでここにまとめます。
「私的圏域」は、「経済の単位であること」「個人的な親密性・人間性の源泉であること」あたりから成っているように読めます。
かつて自己完結性が強かった家内生産/家内消費は、封建制を経たのち、資本主義としてスケールを大きくしていきます。社会が制度化されていないなかで情報媒体が発達し、経済や人間性のあるべき姿を議論できる「公衆」が誕生します。例のコーヒーハウスですね。
しかし国民国家と資本主義の制度化がさらに進むと、まさに「プライベートな企業」たちが「世間のあるべき姿」を勝手に体現し、市場シェアの確保を目論むように。メディアや討議すら商業化し、消費者はまさに消費するだけの存在になっていきます。
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この本は事実の確認を目的としているので、「どうすべきか」には触れていません。パッと思うのは、①ブルジョワじゃないのに勉強して公衆になるとか無理でしょ、 ②コミュニケーションのしんどさ/消費の心地良さに抗うにはどうしたらよいか、③自分語り的な自称社会善(これ自体は完全悪でない)を中和するにはどうしたらよいか、ってことです。
また読めたら読みたいけど、こういうときは読まないので誠に勝手ながら読了とさせていただきます。疲れた。
- 感想投稿日 : 2024年1月8日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2024年1月8日
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