オネーギン (岩波文庫 赤604-1)

  • 岩波書店 (2006年9月15日発売)
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本書はロシア近代文学の嚆矢、アレクサンドル・セルゲーヴィッチ・プーシキンの傑作小説。
プーシキンは後のロシア文学界の巨匠、ドストエフスキー、トルストイ、ツルゲーネフらに大きな影響を与えた作家である。

本書は1832年に完成したプーシキンの韻文小説。
プーシキンは1799年生まれであり、プーシキンが38歳の時(1837年)、自分の妻に横恋慕した友人に決闘を申し込み、その決闘で友人の発射した拳銃の銃弾の傷が元で命を落とした。
プーシキンは1828年生まれのレフ・トルストイ、1821年生まれのフョードル・ドストエフスキーらから見れば父親的な世代であり、その作品だけでなく、生き様についてもロシア近代文学界への影響は大きかった。

本書のストーリーは非常に単純。
主人公は題名にあるエヴゲーニィ・オネーギンと純情な少女タチアーナの二人。
オネーギンは簡単に言えば世間に馴染めないプレイボーイ。女の子を引っかけては捨てるということを繰り返す色男である。
そしてタチアーナはそんなプレイボーイに恋してしまう一途な娘だ。

オネーギンに恋した純情な少女タチアーナはある時、オネーギン宛に恋文を送る。しかし、オネーギンは「自分は貴女の気持ちを受け取れるようなまともな男ではない」と若きタチアーナをあっさりと振ってしまう。
その後、月日が流れ、タチアーナはある貴族と結婚する。偶然、タチアーナを見かけたオネーギンは、美しく成長したタチアーナに狂おしいほど恋し、今度はオネーギンがタチアーナに恋文をしたためる。
オネーギンと再会したタチアーナであるが、オネーギンに対して涙ながらに言う。「わたしは今でも貴方を愛しています。しかし、私はもう人妻となった身、貴方を受けいれることはできません。」ときっぱりと断り、立ち去っていく。

という物語である。
こんな単純なストーリーながら、オネーギンとタチアーナというキャラクターはその後のロシア文学に大きな影響を与えている。

本書で描かれる世の中に対して斜に構えるイケメン主人公のエヴゲーニィ・オネーギンと純情可憐で一途でありながら一本筋の通ったヒロイン・タチアーナ。
特にヒロインのタチアーナはロシア人女性の理想像と言われているのだ。

ロシア文学に興味のある方はぜひ一読してほしい。
この二人のキャラクターを元にしたロシア文学がわんさかあるので、そういった本を探していくのも楽しいものである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(純文学)
感想投稿日 : 2020年12月27日
読了日 : 2020年12月13日
本棚登録日 : 2020年12月27日

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