ユージニア (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2008年8月25日発売)
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本棚登録 : 9082
感想 : 796
5

恩田陸らしい、重層で深い世界観に飲み込まれます。
特に前半では、点と点が結びついて、線になりつつも、線が交わったり交わらなかったりして、この物語がどこに続くのかわくわくさせられます。
以下若干ネタバレになりますが、明確な結論をあえて明示しなかったのは、ひとつの答えや真実を求める現代社会へのアンチテーゼのように思えました。
『忘れられた祝祭』はあえて細部の記載が事実と変えられていましたが、そもそも人の記憶は曖昧なもの。インタビュー内容がすべて事実という保証はありません。各章がインタビュー形式になっているのも、それらが意図的にしろ無意識的にしろ、物語の中での矛盾を許容しているものとなっています。
誰かが「真犯人」ということではないことで、もやっとする終わり方ではありますが、分かりやすく誰もが納得する「正解」はないということが、物語の奥行きを出しているように思えました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年5月31日
読了日 : 2020年5月31日
本棚登録日 : 2020年5月31日

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