人間の建設 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2010年2月26日発売)
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本棚登録 : 3196
感想 : 279
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二度挫折して、三度目の正直で読み切りました。
150Pくらいの薄い本なのですが、体力使いました。

「難しい」とは何か?
「わからない」とは何か?
これらを考えさせられました。
世の中の事を大体わかった気でいましたが、全然そんなことはなかったですね。

この本は読んでいるうちに(100P超えたあたりから)癖になるところがあります。体力ある時にもう一度読み返したいと思います。

お二人(小林氏、岡氏)は文系と理系とで全く異なる世界で生きてきたのに、波長が合っている様子がうかがえます。とても不思議。
お二人の住んでいる世界感が同じだからなんだと思います。
反対に、私は「住む世界が違う」って、こういう事を言うんだなぁ、と感じました。

まず、二人の会話に登場する共通言語について行けないのです。
結構得意ジャンルと思っていた文学・美術の話が登場しますが、ついて行けない。
例えていうなら、富士山の麓から頂上にいる二人の会話を聞いている感じ。自分の文化教養度の低さを感じました。

例えば、文中にトルストイ・ドフトエスキー・ピカソ、と言った名だたる巨匠の作品が登場します。
彼らが創った作品がどんなものか、ざっくりとした知識はあります。
しかし、彼ら(小林氏、岡氏)のように時代背景や作者の思いまでくみ取り、作者がどんな状況下にいて、何を訴えたくてその作品を創ったのか。作者についてとことん調べ、作品と作者を紐づけたうえで一つの作品として見ているんです。そのうえで、「これは好き」「これは嫌い」と判断している。
物事を深堀りするっていうのはこういう事なんだな、と勉強になりました。
(私は作品単体としか見てないよ。。。「薄っぺらいな、自分」と思っていたけど、そういう事なんだと思う)

文学に至っては、実際に読んでいるか、も会話の肝となります。

”「白痴」のムイシキン公爵とか…”
普段、こんな話しますか?笑
この会話について行くためには、「白痴」を読んでムイシキン公爵がどんな人物なのか、ストーリーで彼はどういう役目なのか、本を読んでいることが必要なのです。
普段から何を見てどう感じているのか。
対象物が私とは全く違う。笑(住む世界が違うって、ここの違いだと思う)
「わからない」って純粋に思ったのですが、そりゃそうなのです。読んでいないのですから。
この本を読んで、久しぶりに「わからない」って感覚を抱きました。
同じ日本語を話しているのに、知識がない故に理解できない。共通言語について行けないって、こういう事を言いたいのです。

”わかるということはわからないなと思うことだと思いますね”(抜粋)

ものすごく考えさせられる言葉です。
こちらの書籍は「わからないな」だらけでした。。。
私も「わかる」に一歩近づけたということでしょうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自己啓発
感想投稿日 : 2023年12月21日
読了日 : 2023年12月21日
本棚登録日 : 2023年12月20日

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コメント 2件

Tomoyukiさんのコメント
2023/12/21

こんばんは。(^^)
教養の深さと広さが異次元ですね。

私も、出来るだけ昨今のファスト教養みたいな風潮に抗いたいと思います。笑

キキさんのコメント
2023/12/22

Tomoyukiさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

「教養の深さと広さが異次元」
そう、これが言いたかったんです!
ありがとうございます。
私もこの本を読んで、消化のいい本ばかり読んでいたと反省しました。
年末年始の休暇で、トルストイ、挑戦してみるかなーと考え中です。笑

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