世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2013年3月8日発売)
4.01
  • (64)
  • (71)
  • (39)
  • (7)
  • (3)
本棚登録 : 854
感想 : 66
5

モーゲージ債: ローンをかき集めて証券化したもの.リスクとリターンを階層別に切り分ける
サブプライム:劣位

誰かの人間の資産は誰かの人間の負債→モーゲージ債はこの負債をこねくり回して証券化 流動性が高まり効率性が生まれ負債を抱える側も低金利でローンを借りられるようになるという一見するといい話

→経済の発展って「貸し借りの発展」なんだな


主人公のアイズマンは裏表がなく,ある意味”空気が読めない”ところがあるけど
他人に流されず,自分で考える力を持っているとも言える

金を貸す銀行側が正常な判断ができなくなることはある 少し前だったらスルガ銀行がいい例.返済能力が行き詰まる融資を見つけたらそれはいずれ弾けるバブルなんだなあ.歴史は繰り返す

ブラックスワンにかけることは,痛みを伴う.
モーゲージ債の保険(CDS)の保険料,プットオプションのロング

”欲に訴える手がダメなら,次は不安を煽る”

なぜ格付け期間は爆弾見たいな債権に最高評価をつけてしまったのか
・格付けがザルであることを格付けさせる側(投資銀行)が見抜いてそそのかした
・消費者の信用度評価に用いるスコアがザルだった.
 車の運転経験がゼロの人に,「この人は事故を起こしたことがない」とゴールド免許を発行する 見たいなスコアリング
  具体的には出稼ぎのために移住してきた人(ローンを借りたことがないから当然ローンを焦げ付かせたこともない)に高い信用度をつけた.

意思決定で大事なことって「未知をなくす」ことだなあ

こういうブラックスワンでチャンスを掴むには
・世の中は案外合理的ではないという認識(外見はまともでも中身が杜撰で付け入る隙があるものが存在する)
・人の話を鵜呑みにしない懐疑心
・自ら真実に到達しようとする好奇心,執念,頭脳
・その日が来るまでメンタル・フィジカル(資産)がダメージを受けることになろうともブラックスワンが来るまで耐え忍ぶ忍耐力と余力
が必要,それを行動に反映する大前提として「自分は無知である」という謙虚さが必要.傲慢になったらそこで終わり

タレブみたいなひとがいっぱいでてくるし、みんな自分の行いが報われるまで物凄く「何か見落としているんじゃないか」と葛藤している。
ブラックスワンにかけるというのはその日が来るまでは報われない苦しみを避けられないらしい。
鶏小屋の鶏1000羽が「明日も餌をもらえる」と思っている中、自分だけ「明日は七面鳥にされる、今夜にでも逃げ出そう」と考えているように。

サブプライムの崩壊にかけていた人も終盤「金融そのものの崩壊」というリスクには振り回されたっぽい
いくら保険を買ってもその保険を支払う能力が相手になければその契約は意味ないもんな

”投資銀行の経営陣が,自行には十分な流動性があるという時,それは例外なく,流動性がないことを意味する”
→外見を取り繕うシグナリング 言葉だけじゃなくて行動でも

稀な事象ほど,発生確率が低く影響も小さいと誤解されがち.
ー>誰も見向きもしなかったプットオプションが暴落を機にとんでもない価値を持つようになる.

筆者は最後に,買っても負けても莫大な報酬が支払われるウォール街のシステムを避難している
今回のシステムの崩壊にかけた人はもちろん,今回のシステムの崩壊に加担する側の人間も雇われ先から数千万ドルの報酬を得ている

多分その仕組みは今も変わってなくて,タレブのいうSkin in the gameではない,ということだろう.
頑張っても報われない世界もあれば頑張らなくても(成果が比例しなくても)勝手にお金が入ってくる世界もある
そういう意味で世の中は公平に作られていないということをもっと早く知っておきたかった.

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年3月17日
本棚登録日 : 2020年3月14日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする