風の谷のナウシカ 7

著者 :
  • 徳間書店 (1994年12月15日発売)
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本棚登録 : 2783
感想 : 210
5

急展開とはこのことよ。ユパの最期もそうだし、なだれ込むように世界の謎へと。ユパとクシャナの「わかえりあえる感」……ナウシカと母……精神分析への誘惑……。
……。
すべてはシュワの墓所による、いわば元・人類……プレ・いまの人々による計画だったのだ、と。「おまえは危険な闇だ。生命は光だ!!」
それへナウシカは「ちがう。いのちは闇の中のまたたく光だ!!」と言い放つ。
クシャナの父は「気に入ったぞ。お前は破壊と慈悲の混沌だ」と結構いい役どころ。
このへん、漫画のテンションの高さに圧倒されっぱなしだけれど、冷静になってみると、何も言っていないに等しい。
一言で言い換えれば「混沌」「清濁」「きれいはきたない、きたないはきれい」くらいか。
宮崎駿といえば「ラピュタ」の冒険活劇・漫画映画的側面にだまされがちだが、全体を通して見てみると、ほとんどが、わからない、はっきりしない、結論は先送り、善悪が保留される、対立軸がわからなくなる、戦争好きと平和への拘りで引き裂かれ、世界生き延びよと世界滅びよが同時に発せられる、すべてアンビバレントなのだ。

まずは「ナウシカ考」で深める。
次に他の宮崎駿作品群を見返す。特に「ナウシカ」「もののけ姫」「風立ちぬ」を重点的に。
それらいわばマジメな作品をフラッグにして、その間を埋めることで、彼を貫くヒューマニズム/ニヒリズム・ペシミズム、反戦/兵器好き、に再度注目してみる。「/」に引き裂かれている点こそが作家性だとわかったので、そこに着目しつつ。
手塚治虫、水木しげる、諸星大二郎、高畑勲、など、重なり合いつつ同時代に活躍した作家たちに目を向けるきっかけにする。日本アニメの黎明期とかジョン・ラセターとか「雪の女王」とか。
などなど宮崎駿を基点にして、いろいろ再鑑賞、整理していきたい数か月。結構巨大な個人的プロジェクトになりそうだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2020年6月7日
読了日 : 2020年6月6日
本棚登録日 : 2020年5月20日

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