やはりよい……笑えて泣ける。タナトスたっぷり、飄々と、淡々と、寂しくて、でも優しくて。
貸本版で読んだときも感じたが、やはり水木作品の中では一番好きだ。
貸本版との大きな違いは、「死神」「空中水泳」のあとに、長編「ストトントノス七つの秘宝」(冒険譚)と中編「屁道」が挟まった上で、「猫の町」と続くところ。
絵的には、ストトントノスの地底がギュスターヴ・ドレ「神曲」挿絵っぽいな、と。
また峠の茶店の妖女、水の精の少女がやけに色っぽい……というかたぶんというかほぼ確実につげ義春の筆なのだと思うが。
つげが水木のアシスタントを務めたのは1964年以降。この少年サンデー版が連載されたのは1968-1969年。
話的には、全体を一気読みして意外と人を化かすの動物オンパレードでもあるところ……河童、タヌキをはじめ、鳥、カワウソ、イタチ、猫。
またお祖父さんの死後、三平の孤独に闖入したタヌキとの悪友ぶりに、以前から感じ入っていたが、小人やら死神やらを結構受け容れる……タヌキに言わせれば人が良すぎるという言い方になるのかもしれないが、あのだだっ広い部屋で横たわるという体験を一度してしまったら、どんな異形でも受け容れてドタバタしているほうがよい、と三平は感じているのかも(その次のページで、タヌキが勝手に入り込んでぐうぐう寝ている……ドタバタなのだが、寂しさを忘れさせてくれたという点では救いだったのかも)……その性質が結果的に異界へ踏み入り成長したり客死したりする遠因になっているのかも……などと考えた。
巻き込まれた状況をすんなり受け入れ、けっこ頑張る健気さ、そして死すらも受容してしまうあたり、近代的自我以前の感じがある。
あるいは水木しげるだからこその死生観とも。
解説に石子順造が書いていたが、タヌキー鳥ー死神(≒ねずみ男)、という構図。
- 感想投稿日 : 2021年1月24日
- 読了日 : 2021年1月24日
- 本棚登録日 : 2020年5月28日
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