作者は1955年生まれ。
2012年に「黄色い雨」(原著1988,邦訳2005単行本、2017文庫)を読み、
2013年に「無声映画のシーン」(原著1994、邦訳2012)を読んだ。
その後「狼たちの月」(原著1985,邦訳2007)は積読にしていたが、2022年このたび短編集が刊行されるにあたり、手を伸ばしてみた。
スペイン内戦って難しいが、フランコ反乱軍が勝ったために、元政府側だった人民戦線の民兵が追われた、本作は追われて逃げる側の約10年、という程度の把握でよい。
ひたすら里の近くの山で隠れる彼らの敵は、治安警備隊だけでなく、孤独。
カバーイラストがばっちり世界観を表している通り、描かれるのは静けさと孤独……この点でさすが「黄色い雨」の作者だ。
そしてビクトル・エリセ、アデライダ・ガルシア・モラレス、ベルナルド・アチャガに共通する、スペイン北部の荒涼。
……異国の十分に想像が及んでいるとは言い難い風景に、どうしようもない郷愁を感じてしまうのは、道理に合わない現象で、この疼きって一体どういうことなのだろうか。よくわからない。
ともあれ「ミツバチのささやき」(1973年製作だが、舞台は1940年)を再鑑賞するときに、あの荒涼のどこかに本作の人物が描き込まれているように想像してみよう。
ますます多層的に感じられるはず。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文学 海外 スペイン
- 感想投稿日 : 2022年5月18日
- 読了日 : 2022年5月18日
- 本棚登録日 : 2013年8月24日
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