号泣する準備はできていた

著者 :
  • 新潮社 (2003年11月19日発売)
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本棚登録 : 3634
感想 : 473
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この本を読み終わったときの感情は「やるせなさ」である。

映画『阪急電車』の冒頭部分のナレーションで語られる、

人は、それぞれみんな色んなやりきれない気持ちを抱えて生きている。死ぬほどつらいわけではないけれど、どうにもならない思いを抱えて生きている。
そして、その気持ちは誰にも言えないのだ。...(以下略)

という内容をまさに表現したような短編集ではなかろうか。


また、この作品には「孤独」という言葉がよく登場する。

喪失するためには所有が必要で、孤独を感じるためには誰かといた記憶が必要である。そして、ずっと孤独な人は孤独を感じることもないのだろう。

日々悶々と抱える得も言えぬやるせなさと、誰かといたからこそ感じる「孤独」を抱えながら、我々は生きているのだと改めて感じた作品であった。

ハッピーエンドやバッドエンドが語られる小説が多いなかで、どちらにも分類しきれぬが私たちが日々直面しているストーリー(感情)を、やわらかく繊細に表現した、面白い作品だと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年12月18日
読了日 : 2020年12月18日
本棚登録日 : 2020年12月18日

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