この本を読み終わったときの感情は「やるせなさ」である。
映画『阪急電車』の冒頭部分のナレーションで語られる、
人は、それぞれみんな色んなやりきれない気持ちを抱えて生きている。死ぬほどつらいわけではないけれど、どうにもならない思いを抱えて生きている。
そして、その気持ちは誰にも言えないのだ。...(以下略)
という内容をまさに表現したような短編集ではなかろうか。
また、この作品には「孤独」という言葉がよく登場する。
喪失するためには所有が必要で、孤独を感じるためには誰かといた記憶が必要である。そして、ずっと孤独な人は孤独を感じることもないのだろう。
日々悶々と抱える得も言えぬやるせなさと、誰かといたからこそ感じる「孤独」を抱えながら、我々は生きているのだと改めて感じた作品であった。
ハッピーエンドやバッドエンドが語られる小説が多いなかで、どちらにも分類しきれぬが私たちが日々直面しているストーリー(感情)を、やわらかく繊細に表現した、面白い作品だと感じた。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年12月18日
- 読了日 : 2020年12月18日
- 本棚登録日 : 2020年12月18日
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