▼「北の狩人」大沢在昌。初出1996中日スポーツ新聞連載。幻冬舎。
▼大沢在昌さんと言えば「新宿鮫シリーズ」(1990~現在)がいちばん有名。僕も全部楽しく読んでいます。数年に一度襲ってくる、「大沢さんの他のエンタメ小説も読んでみようシンドローム」の読書です。大沢さんは1956生だそうで、大まか言うと34歳くらいで「新宿鮫」で人気作家になって、40歳くらいで本作を書かれた、ということですね。
1996だから、一部は携帯電話が出始めているくらいでしょうか。まだネットで色々調べる、というのは一般化してないですね。
▼秋田県だったかな?そこから若い男性が新宿にやってきます。舞台は新宿が中心。強そうに見えないけど腕っぷしは強い。暴力団の世界に自分から関わって色々ものを尋ねていく。女の子と出会ったりする。何が目的なんだろう。その男性が気になって、関りになっていくヤクザさん、刑事、エトセトラ…。
(以降ネタバレ)
▼主人公男性は、実は警察官。大昔、やはり警官だった父が、新宿の恐らく暴力団絡みのことで殺された。殉職。息子(主人公)も地元秋田県で刑事になって、優秀で、母が亡くなったことがきっかけで、とうとう「父の死の真相と復讐」に乗り出した、という話です。
▼謎で引っ張るエンタメ性と、ちょっと強引でクサくてもキャラクターを立てて惹きつける描き方、そして多少のご都合の良さを辞さないテンポ感とアクション描写。それらは「新宿鮫シリーズ」と同じ技術だと思います。特に後半はやっぱりどんどん読んでしまう。
▼ただ、「鮫」シリーズは主人公が刑事なんで、「さて次のお仕事は」で進んでいけるし、主人公の日常=危険も伴う犯罪謎解き、という前提で作れるので物語の立ち上げに感傷性が不要なんですが、そのあたりがこういう単発ものはそうはいかない。なんで、基本的に若干感傷過多になりますね。そしてもちろん初出がスポーツ紙ですから、やっぱりそういう役割をきっちり果たしているってことかな、と。
▼あと、序盤かな?物語世界の中で、間接的な噂話でちょろっとだけ「新宿鮫」に触れるところが、ファンとしてはニヤッとしてしまいますね。
- 感想投稿日 : 2023年3月12日
- 読了日 : 2023年2月10日
- 本棚登録日 : 2023年2月10日
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