これで古典がよくわかる (ちくま文庫 は 6-8)

著者 :
  • 筑摩書房 (2001年12月1日発売)
3.80
  • (62)
  • (78)
  • (62)
  • (12)
  • (7)
本棚登録 : 854
感想 : 87
5

世界価値観調査によると、日本人の世俗性は世界トップクラスです。
世俗性というのは、言い換えると、ミーハー(新しいモノ好き、古いものはダサいと思う)で、
また、物事に対して、損か得かの判断をとても重視するということです。

この特性からいうと、古典を学ぼう、学びなおそうという人は、
確実に少数派になります。
それでもなぜ学ぶのか?

①試験・受験に必要だから
②面白いから
③強制的に学ばされているから

毎年、何万点も書籍は出版されていますが、
その中で10年後、価値あると言われる本は1%もありません。
20年後、30年後になると、0.01%以下になります。
古典と呼ばれるものになると100年の経年数は余裕でありますから、
出版された出版物の中からすると、何千分の一の確率で生き残っているということになります。

つまり奇跡に近いものです。
では、1000年前になると、どうか?

本が生き残る条件は何か?

それは、不特定多数の人が、その本に価値を認めたことになります。
自分が面白いと思っても、他人が面白くないと思ったら、
残らない可能性が高い。

また学術的価値が高いとか、芸術性とか、いろんな判断基準で、価値を測りますが、
古典というのは、「偉い」というのは間違いありません。
ただ、この「偉い」は、権威的にならざるを得ない宿命にあるのか、
わかりませんが、日本人は、特に権威を嫌います。
古典を忌避する理由の一つが、この権威性かもしれません。

また、「わからない」ということが、非常に怖く思ってしまう人が多い。
オトナになると、ますます、わからない、知らない、できないを、
認めたくならないように、なります。

著者の論の進め方は、非常に丁寧です。
古典を怖がらないでくださいと言っています。
古典=わからないもの、難しいものであることを認めた上で、
現在の私たちが、わかるもの(箇所)もたくさんあるとして、
多くの例を挙げてます。多くが、古典で出だしの部分です。

著者は、枕草子から、源氏物語、平家物語の逐語訳の名手です。
氏ほど、日本の古典から現代的な意味での知恵を引き出した人はいません。
それは、古代人も、現代人も、共通するものは、たくさんあるし、
また、新鮮味があるとしています。

日本人は、どこまでもいっても世俗的ですが、
新しいモノを、すぐに取り入れることに長けています。
ただ、今はその新しいモノが欠乏しています。
もう取り入れるモノがない、飽和状態になっています。
その時に、過去から学ぶことは、誰でも思いつくことですが、
できる人は、ほとんどいません。
しかし、やろうとしている人は、豊かな人生を手に入れたものと、
同義と言えるかもしれません。

著者は、既に故人となりました。
非常に残念ですが、膨大な量の書籍を私たちに残してくれました。
おそらく一生かかっても、著者の見識には到達できません、
現在の混迷な時代を生き抜く上で、著者の作品は、自分たちに、
多大なるヒントを与えてくれるのは、間違いないと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年12月2日
読了日 : 2019年12月2日
本棚登録日 : 2017年7月5日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする