世界のすべての七月

  • 文藝春秋 (2004年3月11日発売)
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感想 : 40

1969年度の大学卒業生が31年ぶりの同窓会で出会う。主要な11人の人物の過去を振りかえり、そして同窓会でのはちゃめちゃな喧騒。いうまでもなく、ベトナム反戦世代であり、卒業後直ぐにベトナムで片足を失った男性デイヴィット。彼を裏切り、その後乳がん手術で胸を失った女性ドロシー。大学の卒業アルバムでトップレス姿を披露し、停学処分になったスプーク。若い女性を妻にもったマーヴ。チアガールとして活躍し、今は女牧師になったが問題を起こしているポーレット。・・・53歳という設定は今の自分の歳と近く、彼らが31年ぶりに会った席で昔の恋愛感情を思い起こし、場合によっては新しく恋愛が始まるという姿も理解できるものがあります。訳者・村上春樹も同世代として共感を覚えたのだと思います。しかしながら、理想に燃えた1969年の情熱と肉体の美しさを失い、醜悪とさえもいえる愚にもつかない会話に励む彼らの姿は私たちへの何とも言えない皮肉とも感じられるものがあります。1969年はアポロ11号月着陸、ニクソン大統領就任、万年最下位NYメッツのミラクル初優勝など、昨日のように思い出す、私にとっても印象的な年です。村上龍の原作に基づく「69年」が映画化され、ヒットが見込まれるとのこと。イラク戦争による米国の世論分裂が35年前に似ているからなのでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学
感想投稿日 : 2013年8月24日
読了日 : 2004年7月21日
本棚登録日 : 2013年8月24日

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