無垢の博物館 下

  • 早川書房 (2010年12月23日発売)
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本棚登録 : 149
感想 : 10
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もし、今恋愛から遠くにいる人や、恋人とうまくいっている人には理解しがたい世界で、失恋した人や強烈な片思いの人ならシンパシーを感じる物語なのかもしれない。
ともあれ、フュスンの家に8年も通い詰め、ついに結婚というところまで来たケマルさん。その間もフュスンの家からいろいろなものをこっそり持ち出し、コレクションに加えていく。やはり、気味が悪く、受け入れがたい。

結婚が決まっても、フュスンの葛藤には全く頓着しない。観察物のように彼女を愛でながらも、昔置き去りにされた時の彼女の悲しみや、女優になりたいという夢に本気で向き合うことはなかった。
それは、ケマルさんが自分の思うような理想像の彼女しか欲しくなかったからでは。
コレクションした物たちは、いわゆる死んだもの。なにも裏切ることなくケマルさんの傍らでフュスンを思い出すよすがとなってくれる。
だから結婚目前で彼女を失ったことは、ケマルさんにとっては悲しいばかりではなさそうだ。
永遠に彼女の記憶とともに穏やかに過ごせるのだから。

※うっかり自分で「これいいね」ボタンを押してしまいました。
どうやったら取り消せるのでしょうか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外の作家
感想投稿日 : 2012年4月12日
読了日 : 2012年4月12日
本棚登録日 : 2012年3月25日

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