実にいい表情をキープしながらの、ナイスなポージングをした猫たちが、わんさか登場し、猫好きの方はもちろん、町田尚子さんの描く猫好きにも、たまらない絵本です。
しかし、物語は、なまえのないねこが、名前のあるねこたちを羨ましそうに眺めつつ、孤独にさまよい歩く姿が多い上に、その眺める姿は、かなりの遠目からの視点ばかりで、じゅげむを眺める絵なんて、もう細かい表情が描けないくらいの遠さで・・おそらく、中に入ると追いだされると思って、自ら遠慮しているのだろうが、それがなんとも切ない。
ただ、それでも、なまえのないねこは、自分に合うなまえを探し続ける中で、自ら答えを発見する。
私は現在、ペット禁止の賃貸に住んでいるので、飼い猫はいないのですが、以前、自然の多い大きな公園によく行っていたときに、たくさんのノラと何度も交流したことがあり、それぞれに、やんちゃなところやのんびりしたところ、愛おしいところ等々、みんなそれぞれに素敵なところがあって、可愛くない猫なんていないと思ったものです。
本書は、そんな素敵なところを見てくれる人に、いつかきっと出会えるよといった、希望の物語であるとともに、どんな猫にだって素敵なところがあることを、教えてくれたようにも感じられて、それまでの思わず笑ってしまいそうな、いい表情とはまた違った、なまえのないねこの、答えを発見したときの真摯な表情に、町田さんの猫愛を感じられました。
そうそう、猫愛といえば、表紙と裏表紙それぞれの見返しが、ちょっとしたクイズになってまして、読んだ後に楽しめるようになってますが、かなりマニアックで、なかには答えられないものもありますが(そりゃそうだなのですがね)、自称町田さんの猫の絵好きな方は、ぜひ挑戦してみましょう。
- 感想投稿日 : 2022年11月16日
- 読了日 : 2022年11月16日
- 本棚登録日 : 2022年11月16日
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