まるまるの毬 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2017年6月15日発売)
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美味しいお菓子が毎回出てきて、お腹が減ります。

江戸は麹町六丁目の裏通りにある菓子店、南星屋(なんぼしや)の主人、治兵衛が、修行で諸国を廻り覚えた諸国の名物菓子を庶民が買える安価な値段で店頭に並べ、娘のお永、孫のお君。そして弟で四ッ谷にある大きな寺の相典寺(しょうてんじ)の格の高い大住職、石海(こっかい)の四人がおりなす物語です。
カスドース、若みどり、まるまるの毬(いが)、大鶉、梅枝(うめがえ)、松の風、南天月、の短編七話。

【カスドース】
南星屋で作った印籠カステラが、肥前平戸藩松浦家の江戸家老から賄方の河路金吾を通して、門外不出とされるお留菓子のカスドースと同じものだと訴えられた南星屋治兵衛は、製法を変えてなんとか同じような味の菓子を作って…。石海は、もし捕まることがあれば治兵衛の出生の秘密を明かそうと…。

【若みどり】
三十俵二人扶持の御家人で御先手同心・稲川埼十郎の嫡男・翠(すい)之介10才は、家族に黙って、道場はおろか、手習いさえ行かずに南星屋に来て、還暦を迎えた治兵衛に菓子職人になりたい弟子にしてくださいと。治兵衛は、男の孫が出来たように思えて嬉しくて半月が過ぎた。これではいけない…と思っていたやさき父にばれた…。

【まるまるの毬(いが)】
お君は、母・お永の様子が変なので後を付けると、母と娘を捨てて女と大阪へ逃げた父・修蔵と会っているのを目撃して。お君は、激しく母と父をののしる。お永は、6年ぶりに会いに来た修蔵と…。

【大鶉】
治兵衛は、十歳の時に出た実家の岡本家を父の法事のために訪ねた。岡本家の当主は、長兄の興隆(おきたか)の息子で、治兵衛の甥にあたる慶栄(よしえ)である。父に怒られて木に登った7歳の弟の五郎(石海の幼名)を木から降ろすために、治兵衛が、下男の権助を手伝って初めて作った饅頭が大鶉です。法事で同じ麹町で菓子屋を営む大店の柑子(こうじ)屋為右衛門と会う。

【梅枝(うめがえ)】
平戸藩賄方の河路金吾26才が、中老の職にある父が倒れたために急遽国元に帰らなければならなくなり、お君17才に嫁に来てほしいと話した。河路が、国元に帰ったらしかるべき役職に就き江戸へ出て来ることがないかもしれない。それを聞いた治兵衛は、お君を岡本家に1年間行儀見習いに出す決心をします。

【松の風】
岡本家でのお君の生活が、三ヶ月になり少し慣れてきた。治兵衛は、お永には内緒で別れたお永の亭主・修蔵と会った帰り。悪意に満ちた柑子屋為右衛門から「上様の御落胤が、腹に一物抱えているとなれば、ただでは済みますまい」と言われて背筋が凍る思いをする。為右衛門は、父から治兵衛を見習えとさんざん言われて、治兵衛を逆恨みしている。

【南天月】
治兵衛は、七年前に逝去した十一代徳川家斉の実子で、現十二代家慶の兄にあたる。その治兵衛のもとに徒士目付組頭、有馬尚茂が来て「十一代家斉の子ではないか」とただした。治兵衛は、そのような事実はないと突っぱねるが。
松浦家に幕府大目付からお君と河路家の祝言は相ならぬと。実家岡本家は、お役を免じられ小普請組入り、屋敷替え。弟の石海は、相典寺の住職を辞職。そのような折に、家斉の息子で紀州徳川家の当主が病にかかり、小さい頃に江戸城で食べた菓子・橘月が食べたいと…。

【読後】
展開が早く、面白い、お君がおかしくて笑いが起きる。治兵衛が作る、全国の美味しいお菓子が日替わりで毎日二つ、三つと出して一刻(2時間)ほどで売り切りる。こんな店が近所にあったら並んででも買いに行きます。短編7話の中で、治兵衛が、翠之介を孫のようにかわいがる「若みどり」がよかったです。

【再読】
忘れていましたが、2019年5月14日に単行本で読んでいました。そして西條奈加の本を読んだのが、この本が最初でした。続編の「亥子ころころ」は、2019年12月11日に字が小さくて読むのを諦めています。西條奈加さんの本は、字が小さくて私には読めませんが、大活字本が有りました。

【音読】
2022年6月21日から7月3日まで、大活字本を音読で読みました。この大活字本の底本は、2017年6月に講談社文庫から発行された「まるまるの毬」です。本の登録は、講談社文庫で行います。社会福祉法人埼玉福祉会発行の大活字本は、上下巻の2冊からなっています。

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まるまるの毬(いが)
2020.11発行。字の大きさは…大活字。
2022.06.21~07.03音読で読了。★★★★☆
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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2022年7月3日
読了日 : 2022年7月3日
本棚登録日 : 2022年6月21日

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