「わたしをぉ、殺したのはぁ......おまえだよっ!!!」
「ぎゃー」
こんな怪談が子供の頃に流行ったが、犯人指名のシーンで次の頁をめくった瞬間、この感覚に似た驚きと恐怖を味わった。
神々櫛(かがくし)村。
代々、憑き物筋でありながら同時に憑き物落としを取り仕切る谺呀治(かがち)家と、それに対抗し村を二分する力を持つ神櫛(かみぐし)家。
村中の至る所に立てられ畏れ崇められている「カカシ様」
そして正体不明の最も忌まわしき憑き物、厭魅(まじもの)。
神隠しの噂の絶えないこの村を怪奇小説家の刀城言耶(とうじょうげんや)が訪れた時、不気味な連続怪死事件の幕が上がる。
『首無の如き祟るもの』が抜群に面白かったのでシリーズ一作目に手を出したのだが、これがまあ怖い。初期の作品なので文章に若干の読みにくさは感じられるものの、それがより気味の悪さを引き立てているのかもしれない。
村の名前や屋号の仰々しさ、文字は違えど代々同音で「サギリ」と読ませる巫女の一族など、虚構と現実のバランスが横溝正史が4:6なら、三津田信三は6:4。僕らの住む世界と地続きのようでありながら「ここではないどこか感」が漂ういい塩梅。
村での出来事が、谺呀治家の紗霧の日記、刀城言耶の取材ノート、神櫛家の漣三郎の記述録の視点から語られ、読者はその全体像を俯瞰する形となる。
走りながら考えるタイプの刀城言耶の、いい意味での迷探偵っぷりに最後までドキドキさせられ(本人には探偵の意識はなく、作中でも指摘されるゴーストハンターの役回りのようだが)、アッと言わされる。犯人は予想の範疇ではあったが(とはいえミステリを読む時は全てを疑ってかかるので当然なのだが)真実に震え上がった。
ミステリとホラーの融合という難しい試みを成功させているこのシリーズ。ミステリ部分での面白さは『首無』にやや軍配が上がるが、ホラー部分では断然こちらが上。
全体的な雰囲気はもちろんだが、全ての可能性を論理的に排除した後に残る恐怖。うまいなぁ。
刀城言耶シリーズ、これからも追いかけていきたいと思います。
- 感想投稿日 : 2012年12月26日
- 読了日 : 2012年12月16日
- 本棚登録日 : 2012年12月16日
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