ロンドン博物館の「死刑囚監房」から盗まれたいわく付きの短剣。
心霊学者ロジャー・ダーワースによる『黒死荘』での悪霊祓い。
忌まわしい伝染病の記憶。
オカルト設定の中での不可能犯罪。大好物です。
降霊会での幽霊筆記による秘密の暴露に始まり、ポルターガイスト現象、そして呪われた石室における密室殺人。
被害者の体には無数の傷が刻まれている。そばには例の短剣が......
真相を知ってびっくり。
このトリックの発祥はここだったのか!
トリック自体はスタンダードというか今や古典だが、その仕掛けを隠蔽する目眩ましとなるさらなる仕掛けと、巧妙に隠された犯人。
その他様々な複合技が物語を面白くしている。
英国陸軍情報部の変わり者が謎を解くという設定もいい。
およそスマートな探偵とは言い難い、シルクハットを被ったハクション大魔王のようなエロオヤジ。体もでかいが態度もでかい。
風貌そのままの重役出勤で、物語の後半からようやく登場。
なので徐々に雰囲気を積みあげていく中盤あたりまでは多少のじれったさはあるものの、謎解きが始まってからのめくるめく展開には惹き込まれた。
長らく絶版だった『プレーグ・コートの殺人』が新訳で甦ったとのことだが、海外ミステリの古典に不慣れな僕はやはり読みにくさを感じた。
人間関係がつかめず登場人物表を何度も行き来したり、犯行現場や建物の構造が脳内でうまく像を結ばずに苦労した。
重要な伏線の読み逃しもいくつかあるような気がする。
それでも過去の名作が読めることはそれだけで有り難いし、充分楽しんだ。
もっと修行を積まなければ。でもこれは個人的な問題だ。
あっ、そうそう。
ラストはドラマティックでかっこよかったなぁ。
- 感想投稿日 : 2013年2月11日
- 読了日 : 2013年2月10日
- 本棚登録日 : 2013年2月10日
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