「ほかならぬ人へ」で興味を持った作家さん。
図書館にこちらがあったので、借りてみました。
不倫と死をテーマにした短編5作からなる一冊。
表題作は最後に収められていて。その前の4作は表題作の為に書かれたそうです。
この作品、賛否両論なようですね。私は好きです。
不倫が悪いことなのは分かっていて、したくてしてるわけじゃない。それは作中の主人公(男性)も一緒。
でも。してしまう。
繰り返してしまう。
不倫するけど、手当たり次第遊んでいるわけじゃなくて、でも特に離婚をしようと思っているわけでもない男性の心理ってこんな感じなんだろうな、とすとんと腑に落ちた感じがしました。
ストーリー自体はちょっとキレイにまとまりすぎていたり、都合よく進みすぎたりしていますが各作品の途中で描かれる男性の心理描写は、理解も共感もできないけど、「違うでしょう」と否定もできないものでした。
人間なんて、特に愛をメインにした感情なんて、「これ」という形はなくて、小説1つで答えが描き出せるわけもなく、そういうグチャグチャとしたものなんだよ、ということを顕にした一冊かと思います。
一方、「不自由な心」で主人公が語る「結婚」や、主人公が考える「死」については新鮮でありながらも、共感しました。
余談ですが、この作品に出てくる女性が従順すぎる/天使のようだというレビューを散見しましたが、
不倫相手になる女性って、世間が思うよりうんと従順で、したたかさの対極にいると私は思ってます。
だから、不倫相手にしかなれない、と。
もう少し、白石氏の作品を読んでみようと思います。
- 感想投稿日 : 2022年10月10日
- 読了日 : 2022年10月10日
- 本棚登録日 : 2022年10月10日
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