「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門 (光文社新書)

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  • 光文社 (2014年11月13日発売)
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 2020年2月、コロナ患者が発生して横浜へ寄港したダイヤモンド・プリンセスに乗り込み、感染症対策が不備だと批判して有名になった医師、神戸大学教授。 言うことが明快で権威を気にしないところが痛快。
 この本は2014年に出されたリスク・コミュニケーションの本。
以下メモ …………………………………………………………………………
43ページ;リスクの見積もり方=リスクアセスメント
 「リスクが起きる可能性」と「起きた時の影響の大きさ」に注目する。
52ページ:リスクマネージメント
 一つの計画だけに固執することなく、いくつかの予測シナリオに基づいて、プラン B プラン C などの選択肢を持っておくことが大事。
60ページ:厚生省の官僚は現場を知らないで机上の空論でブランしてきた。官僚をサポートしている感染症の専門家はほとんど微生物の専門家であり、現場の臨床家ではない。
 「あの」ウイルスという分かっていることについては誰よりも詳しいが、目の前で熱が出ている人という、不確定な状態に対応する能力も無ければ訓練も受けていない 。
76ページ:リスクコミュニケーション
 専門家は客観的中立的である必要ない。また、そうあることはできない。 その主観を主観として聞き手に伝えることが大事。
77ページ:医薬品による病気のリスクの減少は、相対リスク減少ではなく、絶対リスク減少で表現した方がリスク・コミュニケーションはうまくいく。
 相対リスク減少とは割り算でリスクの減少を計算する方法
 A という薬を使った時の死亡率が3%、使わなかった時が6%とすると
 3÷6=50%。死亡率が半分になったとする。
 絶対リスク減少は引き算で計算する。
  先の例で6ー3=3%。3%の死亡率の減少。
119ページ:上手に質問できない日本人医師、官僚。
  質問をしていると言っても「これってこういうことじゃないんですか」と言うレトリカルな質問であることが多い。これは一見質問のように見えるが質問ではない。自分の意見の表明である。 レトリカルクエスチョンである。
132ページ:社会構成主義モデルによるリスクコミュニケーション。
 一般にリスクコミュニケーションでは専門家が情報を提供し、聞き手が自分たちの価値観や信念や感情を交えてフィードバックします。しかし、社会構成主義モデルでは、両者が情報と自らの価値観を出しあいます。
135ページ:社会的文脈や文化がリスクへの信条に影響を与える。
 日本の多くの親は熱が出たらすぐに医者にかかる文化と信条を持っている。子供の発熱時には即座に病院に連れて行き、それを可能にする医療のアクセスの良さも制度的に担保されている。
 一方アメリカにはそのような文化がなくて、まだそれを可能にする医療保険システムを持っていない。
日本には医療の過剰な内容と医療者の疲弊、最近の言葉で言えば医療崩壊の遠因にもなっている。 アメリカの医療は選択的にアクセスが制限されているため、外来では長い時間をかけて患者の話を聞いてくれたり、最先端の質の高い医療を提供してもらえる利点もある。。
137ページ:コミュニケーションは相手の言い分を聞いて初めて成立する
 リスクを排除するという安易な形でリスクマネージメントするのは良くない
182ページ:対策を行ったふりをしただけではいけない。
 不祥事が 起きた時、例外は例外として対象するのが基本。一人の不祥事のために書類仕事が何倍も増加するのは効率の悪い対処方法である。
 「可能性は否定できない」は思考停止とほぼ同義。 可能性はある、でもまれという量的な思考をすること。
225ページ:フロイトの言葉
 成熟とは、曖昧さと一緒に生きる能力のことだ。
233ページ:副作用と有害事象の違い。
 副作用は医薬品が人間に望まない有害な作用を起こすこと。
 有害事象は医薬品を用いた後に患者に何らかの有害な事象が起きること。
 前者は因果関係を扱い、後者は単なる前後関係を扱う。
 後者においては薬を飲んだ後に車に轢かれたり、0酒に酔って転んだりすることも全て有害事象としてカウントする。 A のあとで b が起きたということである
247ページ :専門家がいうトンデモ説もすごい。
 ワクチンは人にとって毒なのだ。
 ワクチンが100%安全とは言えない。
 私には効かなかった。
  ワクチンはナチュラルではない。
 病気にかかって免疫をつけよう。
  ガリレオだって異端とされていたじゃないか。
 ある学説によると
 ウェイクフィールドはいい人だ。
 ワクチン業界の陰謀だ。
 私は自分の子供の専門家なのです
283ページ: 細菌というのは、わかりやすく言うと抗生物質が効く微生物だと思えばいい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本ノンフィクション
感想投稿日 : 2021年2月18日
読了日 : 2021年2月18日
本棚登録日 : 2021年2月18日

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