小松左京と高階秀爾という博識の二人が、古今東西の絵画について語った対談集。
あまりのビッグネームに、ついていけるか心配になりながらも興味シンシンで、読んでみました。
高階秀爾の芸術論の著作は何冊も読んだことがありますが、SF作家というイメージの小松左京が、彼と肩を並べるほどの芸術に造詣が深いことを知り、驚きました。
やはり著作家は、博覧強記であってこそなのでしょう。
二人とも、ウマがあったようで、夕方から翌朝にかけてなんと16時間も対談したそうです。
その内容を本で読めるとは、なんと贅沢なんでしょう。
シャガールの絵には、幻想的なふわふわした作品というイメージがありますが、ユダヤ人にとっては、どの作品もすべてユダヤの民話や諺に全部当てはまる絵言葉もので、ファンタジーというわけではないんだそうです。
たとえば、ユダヤの言葉には、気持ちが高揚したときに空を飛ぶ、という言い方があるそうな。まさにシャガールの絵ですね。
「屋根の上のヴァイオリン弾き」とは、「幻想を追う、虹をつかむ」というユダヤ的表現だそうです。
また、ゴッホがよく題材として取り上げた糸杉は、南仏では墓場の木で、死のイメージを持つものだとのこと。
ハリウッド映画では、男の善玉は必ずブリュネット(栗毛色)の髪をしているそうです。
歌舞伎のように、見た目で役割がわかるようになっているんですね。
金髪は派手な役回りのキャラクターで、実際の立て役はブルネットなんだとか。
「紳士は金髪がお好き」の映画の続編は「しかし紳士はブリュネットと結婚する」なんだそうです。
難解な話から砕けた話まで、知らないことをいろいろと教えてもらい、絵画を読み解くヒントをもらえました。
- 感想投稿日 : 2010年10月7日
- 読了日 : 2010年10月7日
- 本棚登録日 : 2010年10月7日
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