赤川次郎の『三毛猫ホームズ』シリーズは、数冊読んだものの、あまりピンときませんでしたが、この作品はミステリーともいえないストーリーだと紹介してもらって読みました。
映画『あした』の原作だそうですが、映画の方も観てはいません。
バス事故で命を落とした人々と、遺されて悲しみに暮れる人々とのつかの間の交流が、ファンタジックに、そしてハードボイルドに描かれます。
1年前の大震災とだぶらせて考えると、一瞬で命を奪われた人、愛する人を失った人の悲しさが、かなり身につまされます。
それでも基本的には明るい雰囲気で話が進んでいくのが著者の持ち味。
悲しみの中にいる遺族たちでも、テンポよく行動していきます。
バスの乗客とその関連者といったさまざまな人が登場し、群像小説風。
会話がメインのため、さくさくと読めていきます。
家族愛が起こした奇跡に、不穏な殺人計画やほのかな恋模様などを交えつつ話は進んでいき、ハラハラドキドキのエンターテインメント要素もたっぷり。
たしかに映画化されても遜色のない構成ですが、どうしても、どこを読んでも全般的にライトだなあと感じます。
ドタバタ展開はありますが、それも軽妙であまり本編の邪魔にはならない程度。
軽さはやはり著者の持ち味であり続けているようです。
ジーンとはしましたが、ドロドロと尾を引く泥臭さや鬱陶しさが一切ない代わりに、感動的な出会いと別れも、存外あっさりとクリーンなままに流れてしまった点が、少し物足りなく感じました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2012年4月4日
- 読了日 : 2012年4月4日
- 本棚登録日 : 2012年4月4日
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