小説8050

著者 :
  • 新潮社 (2021年4月28日発売)
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8050というタイトルから、中年の引きこもりの話かと思っていたが、中学2年の時のいじめが原因で7年間引きこもっていた青年が、紆余曲折を経て立ち直っていく様を描いたストーリー。

親の医者になってほしいという期待を受け、私立の中高一貫の進学校に入った翔太はそこで壮絶ないじめにあい、引きこもるようになる。20歳になったある日、それまでおとなしかった翔太が親に暴力をふるったこと、近所で引きこもっていた50代の男性が親の死後、強制退去させられる様子を見て、父親の正樹は何とかしなければと焦り始める。そんなある日、翔太がいじめた少年たちに復讐をしようとしていることを知り、正樹は裁判で戦う覚悟をする。そして、少し変わった経歴ながら優秀な弁護士、高井と出会い、裁判の準備を進める過程で息子の壮絶な過去を知る。

エリート志向の正樹、自分の結婚を第一に考える姉、せっかく息子のために戦う覚悟をした正樹のやることにいちいち水を差す母親など、家庭環境にも問題があると感じる設定でもどかしく感じる部分もあったが、現実世界でもそういう家庭は多いのかもしれない。
それでも、最後は自殺まで図った翔太が、助かった後、再び裁判に臨もうと覚悟し、実際、裁判に勝って、生きる意欲を見出したことが救いだった。

また、7年後でもいじめの裁判が可能という事実は、今いじめで苦しんでいる子供やその親に少しは勇気を与えられるかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年12月17日
読了日 : 2021年12月17日
本棚登録日 : 2021年5月16日

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