デカダンス文学の傑作と言われる作品。
読もうと思ったきっかけは、原宿ブックカフェという番組で浅田次郎さんが“人生を変えた一冊”に挙げていたのを観たから。
薬か何かで眠らされた少女と、添い寝して一夜を過ごすことが出来る部屋。知人から聞きつけた江口老人は、ある日そこを訪れる。
奥の部屋の布団に眠る若い女は一糸纏わぬ姿で、そしてどんなことをしても絶対に目覚めない。
そこを訪れるのは大抵、もはや男性としての機能を失ってしまった老人ばかりであるが、江口老人はまだ完全に機能を失ってはいない。
隣に眠る若い女を犯して破壊してやろうかという衝動にも襲われるが…。
直接的な肉体の交わりのないエロティシズムが却って妖しさを引き立てていて、死が見え始めている老人が若い肉体を目の当たりにした時に感じる寂寥感がそこはかとなく漂っていた。
その妖しげな家にいる女主人が最後に放つ一言が、凄まじく悲しい真理だった。
他に二編収録されている中の一編「片腕」は一人の男がある女性から片腕を借りて家に持ち帰る物語なのだけど、表題作同様、現実離れしていて不思議な物語だった。
三作目の「散りぬるを」はひとつの殺人事件を小説家が語るつくりで、これだけは雰囲気が全然違った。
解説を三島由紀夫が書いていて豪華。とても絶賛している。
発想力も文章力も凄い。昔の文豪が残した傑作はやはり面白い、と思わされた一冊。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2015年8月26日
- 読了日 : 2015年8月26日
- 本棚登録日 : 2015年8月26日
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