特捜部Q ―Pからのメッセージ― 〔上〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (2013年12月6日発売)
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感想 : 36
5

北欧ミステリ賞「ガラスの鍵」受賞に輝く著者の最高傑作!
と紹介がある。勢いに乗って「!」マークは私がつけた(^∇^)
600ページ近くますます大部になっていた。

何しろ、奇人変人の助手のアサドともローセとも友人気分、カール警部補とは同僚気分になって馴染んできた。

漏れ聞くとボトルメールが始まりらしい。波に運ばれたビンの中の手紙なんてロマンかも。

ケヴィン・コスナーのあのかゆくなるような悲恋映画まで頭の中に顔を出してきた。

海に囲まれたデンマーク、入り組んだ湾のコペンハーゲンならこういう話も生まれるだろう。

* * *

特捜部Qに、未解決だった誘拐事件の証拠品らしい、手紙が入った壜が届いた。スコットランドの北端で仕事をサボって海を見ていた警察官が拾ったものだ。
手紙は痛んでいたがかすかに文字が読み取れた。

書き出しは「助けて」

アサドとローセはこの手紙を拡大コピーして壁に貼り、何とかして読み解こうとしていた。二人は何を話しかけても夢中で壁のコピーを見上げている。
カールはしぶしぶこの捜査をすることになってしまった、もうこの二人には、ほかの事件の捜査は無理だとさじを投げた。

それでもカールは、よその管轄であったが連続放火事件の方が気になって仕方がなかった。

ローセは体調が悪く双子のユアサがやってきた、これもまたローセに輪をかけて変人だったが顔かたちはローセにそっくり、さすがに双子。幸いにアサドとも気が合って捜査が進んで行く。

手紙には差出人はPとだけしか読めなかったが、海辺の小屋に監禁された兄弟らしい。

アサドは例によって「可愛そうな兄弟をわれわれが」と息巻いている。


一方、子どものいる夫婦がいた。夫は仕事を口実に長期に家を空けることが多かった。
妻は夫の粗暴さを危険だと思っていたが、彼こそ、兄弟を誘拐して大金を稼いできた犯人だった。

デンマークにも国教とは別に巷には小さな閉鎖的な宗教が多くあった。その中でもひときわ外部から隔絶した宗教団体がいくつもあった。
彼はその中で子沢山の信者を選び、二人の子どもを誘拐、身代金を受け取ると一人を殺し一人を親元に帰していた。信者同士は家庭内のこのような事件は他人には隠していて、外部に、死んだ子は破門して追放した、というのを知っていた。財産のありそうな家族の中に入り込み、子どもを狙った犯人は常に成功を収めてきた。

Pもこうして誘拐された、手紙を書いた兄は殺され、帰ってきた弟は家族から離れた家に住んでいた。しかしやっとここまで辿り着き、あとを追って来たカールたちには、家族ともども閉鎖的で協力しない。

手紙は優秀な科学捜査部門の処理と、二人の助手の活躍でほとんど解読され、カールの鼻は、手がかりを少しずつ嗅きつけ、追いつめながら犯人に近づいていく。

* * *

大筋はこうだが、その中には犯人との知恵比べのような部分もある。犯人の過去も現在も事件に深く関わっている。
夫を怪しんだ妻の追跡劇もある。

一方なぜか連続放火の話が入る。話は次回まで続いて持ち越しということらしいが、こんな話はどうも紛らわしく、何のかかわりがあるのだろうと思った。

そんなこんなで、少し捜査が多岐にわたり、すっきりしない部分もある。

犯人が早くから登場するものは多く、話に厚みがあるが、今回は少しハードボイルドな部分が多い。

三作の中では一番の出来だと、裏表紙の力の入った紹介も分かる、標準以上の作品で読んでよかったが、どうも前作二つの方が面白かった

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内ミステリ
感想投稿日 : 2019年12月9日
読了日 : 2019年12月9日
本棚登録日 : 2019年12月9日

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