暗闇のなかの希望: 非暴力からはじまる新しい時代

  • 七つ森書館 (2005年3月1日発売)
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フェミニズム的な立場で書かれた「説教したがる男たち」を読んで、その痛烈な男性社会批判にもかかわらず、ユーモア感覚、詩的な美しさ、多数性への開かれなどにすごく惹かれた。

なかでも、「未来は暗い。思うにそれが、未来にとって最良の形なのだ」という引用をもって始まるヴァージニア・ウルフ論「ウルフの闇」に大きく共感した。

とうわけで、同じ引用をもって、本全体が始まるこちらも読んでみたという次第。

冒頭の日本版へのメッセージで、すでに感動した。

「仏教は、世界を、白か黒かの二者択一ではなく、両者をともに包み込む、素晴らしくも多様なものとして見る観点を、わたしのような新参者に指し示しています。今日の世界に恐ろしい事態が進行していますが、それが唯一のありかたではありません。さらに、現在のありかたは、未来のありかたではありません。一寸先の未来に何が起こるか、わたしたちはまったく知らないという事実を抱きしめること ー これが、わたしに何よりも身に染みる仏教の教えなのです。未来の不確かさが、希望の基盤になります。何が未来に起こるかは、部分的にしろ、何をわたしたちがするのかによります」

「わたしたちは語り部です。ところが、ともすれば既知の物語が、岩のように不動で、日の出のように必然であると信じてしまいます。どのようにして古い物語を解体するのか? 解体するだけで終わらず、どのような新しい物語を語れるのだろうか? ー このようにわたしは自問するようにしています。物語はわたしたちを陥れもするし、解き放ちもします。物語によって生かされもし、死にもするわたしたちですが、聞き手で終わる必要はなく、みずから話し手にもなれます。ここに記すわたしの物語の目的は、あなたがご自身の物語を語るように励ますことなのです」

はい、まさにこのとおりの本です。そして、私も、このとおりだと思いました。

絶望的とも思われる世界のなかで、暗闇とも思える未来について、その不確実である暗闇こそが希望である、という「逆説」を哲学レベルではなくて、多くの希望の事例をあげながらかたっていく。

その事例は、89年のベルリンの壁の崩壊からスタートする。ベルリンの壁が築かれた年に生まれたという著者にとって象徴的なスタート。

概ね、著者と同年代ということもあり、出てくる事例は同時代的に聞き知って、いろいろ感じたもので、なんとなく当時思っていたが、やっぱりそうだよね〜、と言語化されていくのがとてもよかった。

まさに、オルタナティヴ・ストーリーとしての語り直しだな〜。

現実のつまらなさのなかでなんだか消耗したり、疲れたりしていたな、ということに気づき、ちょっと元気になった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年5月3日
読了日 : 2019年5月3日
本棚登録日 : 2019年5月3日

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