太宰の随想が単行本として死後まとめられたもの。
随想ともなると作品以上に、より太宰治の直接的な思考の断片が見えるようでおもしろい。切れ味の良い言葉が沢山あった。
太宰作品をいくつか見たあとに読むととても良い。
「もの思う葦」というタイトルがあまりにしっくりくる。
「太宰治ほど生きるのに真剣でド真面目ひとはいない」というのが読み終えた今の一番の印象だ。ド真面目というか、嘘をつきたくない思いというか。
彼は、考えたことは実行し、また小説と生活は一致しなければならないという思いがとても強い。その思いの強さがある一方、圧倒的な批評能力が自分自身に向き、弱い自分とひたすらに真正面からむきあってしまうからいつも苦しいのだと思う。しかし、苦しむことこそが作家として芸術家として必要なものだと、プライド高く信じている。自分の弱さにあそこまで向き合える人はそうそういないんじゃないか。弱いけど強いという不思議な人。
私が思っている以上に、彼はいつでも真剣すぎるくらい真剣に生きてて、自分の弱さに断固とした誇りがあるんだなと再発見できた。
(傍から見るともっとなまぬるく生きてもいいのにと思うが、それは嫌なんだろうな)
以下ざっくりと、それぞれ感想
■アフォリズム
アフォリズムというものにあまり馴染みがなかったが、太宰との相性抜群である。批評家気質が内に向いている(己を批評している)タイプの太宰が、世に向けて切り込むとなるとそれはそれは洞察力に優れたものであり、かつ、その表現がユニークで良い。
─生きていく力
いやになってしまった活動写真を、おしまいまで、見ている勇気
など、他にも色々。
■『春』『海』
どちらもわずか2ページで、こうも惹き込まれる作品をつくれるとは。また好きな作品が増えた。
■『井伏鱒二選集 後記』
井伏先生が大好きな弟子による、あまりに微笑ましい後記である。大変かわいげのある弟子の姿。井伏先生の作品を宝石に例えている。あの太宰が、宝石と......
べた褒めすぎる。井伏先生の『夜更けと梅の花』は今度読もう。
■『如是我聞』
これがあの有名な、如是我聞。前半の切れ味と真剣さたるや目をみはるほど堂々たる抗議であるが、後半どんどんとただの悪口と化してるのがすこし残念。
そしてこのブチギレ具合の中でも言葉のあやつりがたくみで、根っから作家だなぁと思った。
- 感想投稿日 : 2023年10月12日
- 読了日 : 2023年10月12日
- 本棚登録日 : 2023年10月8日
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