職業としての学問 (岩波文庫 白 209-5)

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ようやく読めた。一読のみでは内容を十分に理解しているとは到底言えないが、以下、現時点で読み取れたことを記載しておく。
旧訳の序(p.85~)によると、本書におけるウェーバーの主張は主に3点である。1点目は生計の資を得る道としての学問の現状、2点目は職業としての学問にたいして人々(特に教師および研究者)がとるべき心構え、3点目は学問の職分そのものについてである。1点目について印象的であったのは、学問を職業にすることには「偶然」が大きく作用するという主張である。つまり、実力いかんよりも、学問を職業とするためには、運の側面も重要であるということである。これは現代にも通用する。2点目については、やはり「日々の仕事(ザッヘ)に帰れ」という叱咤である。文章から想像するに、当時のドイツでは、文壇上から特定の政策に関する評価、主張を行う教師や、あるいはそれを求める学生などが存在していた。これに対しウェーバーは、「学問」と「政策」とは根本的に異なるものであるということを主張した上で、個々人に与えられた仕事に集中しろと主張する。特定の学問に専心すること、仕事以外のことに心酔しないことの重要性を説くのである。3点目に関しては、合理化が進み、学問それ自体も機械化の危機に瀕している現代において、学問に求められていることは、「明確さ」と「責任感を与えること」であると述べる。現象自体が複雑化している中で、全てを語ろうとするのではなく、(例え一部分であろうとも)特定の学問的見地から、明確な学問的成果を生み出し、それを評価ではなく、ただ知見として学生に提示することによって、学問を修めるものに責任を付与することであると解釈した。
この講演はすでに100年以上前のものであり、ここでの主張を全て現代にも応用できるとは限らない。しかし、当時のドイツの時代背景とともにこの主張を読み解くことで、彼が何を危惧し、批判し、主張しているのか、という構造に触れることができる。これは、現代にも通じるものがあると思う。現在は、総合政策的な、複数の学問的知見を組み合わせることによって、社会課題を解決するアプローチも出てきている。良くも悪くも、学問よりも、実社会に役立つことの比重が重くなってきている感覚がある。では、その中で、社会科学を探究する意味合いとは何か。ザッヘに専心しながらも、自分なりに考えを深めていきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 学問
感想投稿日 : 2020年7月11日
読了日 : 2020年7月11日
本棚登録日 : 2020年7月11日

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