米中もし戦わば

  • 文藝春秋 (2016年11月29日発売)
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台頭する中国と、アメリカや周辺諸国との対立について、軍事をはじめ、経済やイデオロギーなど、あらゆる側面から分析した一冊。軍事面での対抗戦略(宇宙戦争やマイクロチップの脆弱性問題)は、シミュレーション小説「中国軍を駆逐せよ!」とも符合するところがあった。アメリカやヨーロッパからの、非合法なハッキングや、安易な生産移転による技術流出により、中国の軍事レベルが無視できないレベルまで向上してしまったことや、専ら巨大な市場を獲得することだけを念頭に、中国側の自由化や透明化を求めることなく、西側の経済圏に取り込み経済的繁栄を許したことが、国内の民主化を促すどころか、かえって共産党独裁体制の強化に繋がったことなど、改めてショッキングな内容が多く、中国に対する楽観論が最早成り立たないことを、否応なく意識させられる。通商関係が密であれば戦争にはならないというのが幻想に過ぎず、場合によってはむしろ戦争の原因にすらなること、また核保有国同士の抑止という考え方が、中国に対しては通用しない可能性があることなども、気づきにくい視点だった。本書では経済の対中依存を減らすとともに、脆弱性が露呈されつつある空母や水上艦ではなく、中国側の対策が後れている潜水艦を増強し、アジア諸国の抱える小競り合いに対して支援をすることで、中国にタダ乗りを許さないことが重要と説く。日本としても、防御的である以上本質的に有利に立つことが困難なミサイル防衛に重点を置く現状からシフトする必要があるように考える。本書で述べられている、防衛上の抗堪性向上という点だけでなく、既存の基地負担の軽減という観点からも、各地に拠点を作り分散するというのは、有効な戦略に見える。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文庫・新書・単行本 - 政治歴史
感想投稿日 : 2018年10月9日
読了日 : 2018年10月9日
本棚登録日 : 2018年5月8日

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