ブクログさんのお薦め本です。
幸か不幸か生まれながらのテレパシーを持って、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬ー彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を快り出す。人間の心理の深層に容赦なく光りを当て、平凡な日常生活を営む小市民の猥雑な心の裏面を、コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい本である。ー文庫うらすじより
文庫うらすじを引用しましたが、非常によくまとまっていて、この本のことを「コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい本である」の「哀しい」というところに撃たれました。
私事で恐縮ですが、この本はずいぶん昔、私が高校の時から今でも交際している親友が、高校の時に「読書は苦手だけどこの七瀬の本だけは好きなの」と教えてくれた本です。
私は父親がかなりの読書好きで家に日本文学全集と世界文学全集がおいてあり、それらの近代文学はつまみ読みしていましたが(趣味は音楽と映画とピアノで全部読むほどの文学少女ではなかったです)当時、高校生の間で流行っていた本にはあまり興味も縁もなく、昔なのでネットの情報もなく(コバルト文庫とかだと思いますが)現代作家の本は、大学生になってから読みだしました。
それで、親友のAちゃんが好きな本ということで、筒井康隆さんのこのシリーズ買ったような気が確かにするのですが、読んだ記憶が全くなく(高校生の頃から積読してたのか!と思いました)今回、初読みのような気がしました。
それで、本題ですが、それにしても七瀬の派遣される家は酷い家族ばかりで、七瀬に手を出そうとするエロ親父の妄想ばかり次から次へと出てきてかなりどぎついので、私と同じ昔の高校生で奥手のAちゃんがこんな凄い、前衛的な本を好きだったとは信じられない気がしました。
続刊もあるのでまた全然違う展開になるのかもしれませんが。
そして、うらすじにある「哀しい」ということば。
人の心が読めるということは「哀しい」ことなんですね。私は、自分のことをそれ程、人に知られて恥ずかしいことを考えている人間とは思わないけれど、人の心を読める能力はない方がいいと思いました。
神さまが人間に読心術を与えなかったのは、幸いなことだと思います。
よい采配だと思います。
- 感想投稿日 : 2022年2月21日
- 読了日 : 2022年2月21日
- 本棚登録日 : 2022年2月21日
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