藤巻健史×成毛眞×松本大 トーキョー金融道 ―トーキョーの、ニッポンの、世界の金融のイマがもっとも過激にわかる本。

  • 日経BP (2003年3月29日発売)
3.19
  • (1)
  • (8)
  • (25)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 88
感想 : 5
4

この書籍で一番納得したところは、日本人はリスクコントロールが下手くそという点。
バブルも土地の下落リスクを考えずに投資して大失敗して、あとは懲りて投資をしない。
これと同じように原発に対するリスクがあるとは思わずに、リスク対策が疎かだったから大変なことになって、あとはもう拒否反応的に全廃とか。
国民性なんでしょうかねえ。

2003年刊行でちょうど小泉改革が進む中での書籍で、まあ色々言っています。
でも、景気回復の兆しが見えるとか言われるまでですら、10年かかりましたね。

ちなみにこの10年経済状況も含め大して変わっていないので、内容的にはいま現在でも十分通用するのがミソ。

読書状況 読書時間120分、ページ数223ページ

【なるほどな点】
・トレーディングでの連続勝利の秘訣を聞いたときのことだ。ポジションを作るときはあらゆる情報を完全に入手しておくこと、という1点であった。(P3)
・(失われた20年からの脱出方策について)政府はちゃんとアカウンタビリティ(説明責任)を果たした上で、その上で、国民が参加する形で決めるべきだと思うんです。(P26)
・(アジア通貨危機について)民間銀行が他国通貨で借金をしていた。これが通貨安によって過剰債務となって破産して、金融システム不安になった。でも日本はそういうことがない。(P52)
・円高で潤うのは、輸入系の企業関係でしょうかね。いやむしろ海外の国ですよ。日本の若い人がせっせと働いて年金にお金を払い込んで、それによって払いだされている年金をもらった高齢者は海外に行って、そこでモノを買っている。海外におカネを流しているわけです。(P55)
・(外銀と比較して)日本の銀行の根本問題は経営にある。(P78)
・クオリティペーパーというのは客を絞っているからクオリティペーパーなんであって、もはや日本の全国紙の部数じゃ、ある意味で無理がある。(P103)
・何が日本の金融機関と外資が違うのか。答えを先に言っちゃうと「ハイリスク・ハイリターン」の思想があるかないか。ハイリスク・ハイリターンを撮ろうというガッツというか、それだけ。(P116)
・本来であれば、ハイリスク・ハイリターンというのは、当然ことながら、リスクコントロール・システムをつくってからハイリスクを取らなくちゃいけない。けれども当時(バブル期)の日本人は、不動産をハイリスク・ハイリターン商品ではなく、永遠に右肩上がりで音の上がる商品だと思っていた。そこにリスクコントロール・システムなんか当然ない。結果、ハイリスクを取って、やっぱりやられちゃった。(P117)
・基本的に、ぼく(藤巻健史)は楽観論です。ただし条件は円安です。円安がすすめば日本の景気は良くなる。(P131)
・しかし、日本の場合にはデフレかいなかを見る時、CPI(消費者物価指数)、とかWPI(卸売物価指数)じゃなくて、不動産の値段を考えなくちゃいけないというのが、ぼく(藤巻健史)の説なんですよ。(P139)
・日銀や政府が鋭意努力している景気回復が起こると、国債価格は暴落して市中の金融機関だけじゃなく、日銀までが大損しちゃうわけです。要するに景気回復が始まると金融システム不安が誘発されるという皮肉なジレンマに陥る状況を、いまの日銀の国債買い取りはつくってることになる。(P158)
・本来であれば、銀行は自分より格付けの高い企業にはカネを貸さない。本来は自分よりも信用の低い中小企業に与信するんですよ。与信業ですからね、銀行は。自分より低いところにカネを貸すのが当然なんですね。それで電力みたいに安定的な大企業は、銀行よりもファンディング・レートが低いんだから直接金融で起債すればいい。(P164)
・(他人が)「この話は儲かりそうだ」と私(松本大)に言ってきたら、私はまず最初に自分の財布を隠すであろう。儲かりそうなあいだは人には内緒、そろそろ儲けも出なくなってきてうまく足を洗おうとするときに、「この話、儲かるよ」と人に言うものである。(P211)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2022年8月5日
読了日 : 2014年3月13日
本棚登録日 : 2013年12月15日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする