高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

  • 早川書房 (1984年7月31日発売)
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ヒューゴー賞受賞の歴史改変小説。

1947年、第二次世界大戦は連合国側が敗れ、枢軸国側の勝利に終わり、世界は日本とドイツの二大国に分割統治されていました。それから15年、表向き平穏な世界では、敗戦国として卑屈に生きるアメリカ人、ドイツの政争、暗躍するスパイや日独の駆引きなどがアメリカ西部を中心に描かれます。

それと同時に人々の間では「勝ったのが連合国だったら、どのような世界になっているか」という内容の小説『イナゴ身重く横たわる』がベストセラーになっていました。いったい、〈高い城〉に住んでいる小説の著者アベンゼンは、何故この本を書いたのか。そんなことも混えながら、複数の登場人物たちの行動が絡み合っていきます。

登場人物達の心理描写が細かくて、キャラが立っていて読みやすかったです。意外に思ったのが、日本人には好意的ですが、ドイツ人にはアメリカ人の口を借りて「こんな状況になったのは、ドイツ人のせいだ」と言わせる事に始まり、いろいろ辛辣に描かれているところかな。

とは言え、そのアメリカ人に、中国のものである「易経」を日本人にむりやり押しつけられたとあるのが面白い。作中、その「易経」による占いの結果に、登場人物たちがヤキモキしながら、行動指針にして行く様子も良かったです。

設定以外にSF的なギミックがない本作ですが、ラストの占いにいろいろ含むところがあるのがいいですね。

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2024年5月3日
本棚登録日 : 2024年5月1日

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