愛人 ラマン (河出文庫 509B)

  • 河出書房新社 (1992年2月5日発売)
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本棚登録 : 1026
感想 : 120
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この作品は映画でセンセーショナルな反響があったと記憶していますが、こうやって原作を読むとこれは年寄り婆さんの遠い昔の思い出に耽った繰り言ですね。(笑)
少女時代に彼ー愛人とひたすら性愛に溺れた日々の感傷に耽るみたいな感じですかね。

ただ、マルグリット・デュラスの少女時代はかなり悲惨だったようで、当時生まれ住んでいたベトナムでは父が早くに亡くなり母が土地投資に失敗し、母や上の兄からはモラハラ紛いのことをされていたようです。
なので家庭的な要請や自己逃避など複雑な背景があったように思いますが、金持ちのちょっと気弱な中国人男性に目をつけたのもある意味必然だったのかもしれないですね。
15才のマルグリットは、三つ編みに縁の平らな男物のソフト帽をかぶり金ラメの靴をトレードマークにして男を誘惑し周囲の気を惹く術を心得ていたのでしょう、これに金持ちの愛人の黒塗りリムジンで学校に通っていたとはかなり異様な光景でみんなさぞ近寄り難かったでしょうね。(笑)

年老いたデュラスはそうした孤独な日々と愛人との関係がふつふつと思い出される境地になったのでしょう。
この本では年寄りの昔ばなしよろしく、時空間がころころと変わるだけでなく、自分自身の主語でさえ、私だったり彼女だったりと主観と客観も入れ替わったりするわ、話が愛人と思っていたら友達の話だったりその親の話だったり、そうかと思うと兄の話になっていたりと状況がすぐに変わるので読みづらいことこの上ないですが、こうしたデュラスのごちゃ混ぜの記憶が怒濤のようになって思い出されるのを文章化するのはさぞ大変だったでしょうね。
生々しい少女時代の過去を題材に、ある意味、内面を見つめ直し、熱量や香りや匂いまでもそのままに赤裸々な描写で文学にまで昇華させるところなどはさすがとしか言いようがないですが、ここまでくると、もはや年寄り婆さんの自慢話の域に達しているかもしれません。(笑)

原作の方はデュラスの複雑な心境を淡々と描写していましたが、映画の方はエロティックな方で話題だったように思います。
ぜひ映画の方も鑑賞してみたい。(笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説など
感想投稿日 : 2021年3月14日
読了日 : 2021年3月7日
本棚登録日 : 2020年7月12日

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コメント 2件

淳水堂さんのコメント
2021/03/15

mkt99さんこんにちは。
デュラス読んでました。
「愛人」で書いた体験を小説にしたのが「太平洋の防波堤」ですね。かなり好きな小説です。
母や兄のことは、暴君なところもあるけれど、決して嫌っていないような、なんも複雑なのかな。

mkt99さんのコメント
2021/03/21

淳水堂さん、こんにちは。
コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

返信が遅くなり申し訳ありません。m(_ _)m

私はデュラスはちょっと前に原作・脚本の映画『モデラート・カンタビーレ』を観たのと、本作の『愛人 ラマン』を読んだだけですが、孤独な女性の闇を描く作家さんだと思いました。
母と兄については酷いことをされたけど肉親だけに愛されたいという微妙な葛藤があるんですかね。

デュラスの本は今やあまり本屋で見かけなくなってしまいましたが、また他にも読んでみたいと思います。
ブックオフで探してみようかな。(^_^)
またいろいろと教えてくださいね。(^o^)

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