というのは、彼の作品は、中上健次、村上春樹の作品を意識しながらも、あたかもそれが存在していなくても書かれうるようなたたずまいをもつに至ったからだ。この作品を書き上げた余勢でつい書いてしまった『グランド・フィナーレ』で芥川賞を取ったたことは、阿部氏にとっては不名誉な事実だろう。彼のような作家は、芥川賞なしでやってこそ輝くはずだかた。しかし、今や芥川賞は、その程度の制度的な意味さえも失い、完全に市場原理に組み込まれているのだから、ひねくれた見方をすることもなく、宝くじの三等賞くらいが当たった程度に喜べばよいのかもしれない。
この作品、最後急ぎすぎているので、下巻は星四つ。
読書状況:未設定
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2006年1月3日
- 本棚登録日 : 2006年1月3日
みんなの感想をみる