“儒教が日本の近代化を支えた”というとかつて森嶋通夫氏が『なぜ日本は「成功」したか?―先進技術と日本的心情』(1984年)で提起した問題を想起させられるが、こちらは日本がなぜ近代化に成功したかを中国哲学受容の長期的視点から論じたもの。
著者は「はしがき」において「19世紀には儒教の教義内容が武士の間に広く浸透して国政改革への志を育んでいた。明治維新はこれを思想資源としている」(p.9)と述べ、たとえば丸山真男などに批判される江戸時代の体制教学としての朱子学などはむしろ近代西洋の学術体系を移入するさいの「培養基」となった点を重視するべきと主張している。慧眼だと思う。朱子学的教養に支えられた能吏なしには明治維新の革命は成し遂げられなかっただろうから。
ただ本書は著者の講演やら何やら色々寄せ集めてきたものなので、長期的な東アジアの思想史の流れのなかでその日本的受容と変質を論じていると言えば聞こえは良いが、その難易度にはかなり差があり、読みにくい。もうちょっと何とかならなかったのかと思う。その点が残念。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
思想史
- 感想投稿日 : 2024年1月6日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年11月24日
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