即興詩人: 口語訳

  • 山川出版社 (2010年11月1日発売)
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感想 : 15
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(2013.11.06読了)(2013.10.27借入)
誰かが「即興詩人」を推薦していたのと安野さんの口語訳が出ていたのを思い出して、図書館から借りてきました。どんな話なのかという事前の知識なしで取り掛かりました。
「まえがき」によると「これは、だれもがこころを焦がした、恋の記憶なのです。」と書いてあります。青春の恋物語ということです。
題名の通り、即興詩人のアントニオの物語です。舞台はイタリアです。
最初の方は、ローマをうろうろしますが、ナポリに移り、ポンペイの遺跡やらヴェスヴィオ火山への登山の話なども出てきます。アマルフィへ行き、ローマに戻り、6年過ごしたのちにヴェネツィア、ミラノへと旅を続けます。
イタリアを好きな方には、お勧めです。既にイタリアへ行ってきた方でも、これから行く方でも全然行く予定のない方でも結構です。
主人公アントニオは、母子家庭で育った。六歳のときに、母は、馬車に惹かれて死んでしまう。馬車は、ボルゲーゼ家のものだったので、責任を感じたボルゲーゼ家は、アントニオの面倒を見ることになる。アントニオは、ベルナルドという友を得て、友情を育てるのだが、同じ女性を好きになり、決闘をすることとなり、友を傷つけローマを去りナポリへと向かう。ナポリでも友人を得て、支援者も得て、楽しく過ごすが、人妻に言い寄られて、危険を感じたアントニオは、ローマへと戻る。その時までには、ベルナルドは、命を取り留め、傷も治っているという情報を得ていた。
ローマのボルゲーゼ家で、6年間過ごしたのちに、ヴェネツィアへと旅立つ。ヴェネツィアで良家の娘と知り合うが、財産めあてに言い寄っているといううわさに傷つき、ミラノへと旅立つ。ミラノで、ベルナルドと偶然出会い、和解する。
なぜか胸騒ぎがするので、ヴェネツィアに戻ると…。
ゆく先々で、善き友と、綺麗な女性にめぐり合うという、うらやましいような物語なのですが、結構ハラハラドキドキもあり、イタリアの観光名所めぐりもあり、楽しませてくれる物語でした。

【目次】
まえがき
一 思い出のピアッツァ・バルベリーニ
二 カタコンベと聖歌隊
三 美しい女の子と、はじめての即興詩
四 ジェンツァーノの花祭り
五 スペイン階段のベッポ
六 夜のコロセウム
七 カンパーニャの荒野
八 水牛
九 ボルゲーゼ家
十 ダンテの『神曲』
十一 わが友、ベルナルド
十二 かわいい修道女
十三 ユダヤ人居留地区
十四 ユダヤの乙女
十五 舞踏会
十六 カーニヴァル
十七 オペラの歌姫
十八 おかしなオペラ
十九 即興の詩
二十 カーニヴァルの終わる日
二十一 恋のイバラ
二十二 親友と恋
二十三 アラチェリ教会
二十四 アヌンツィアタのこと
二十五 イースター
二十六 決闘
二十七 絶望の逃走
二十八 山の隠れ家
二十九 ナポリへ行く
三十  留守番と賛美歌
三十一 テルラチーナへ
三十二 ポンティネからテルラチーナまで
三十三 イトリ・ガエタまで
三十四 ナポリの貴婦人
三十五 すばらしい自然
三十六 考古学者夫人のサンタ
三十七 絶望の手紙
三十八 希望の日まで
三十九 ポンペイとエルコラーノ
四十  ヴェスヴィオ
四十一 カジノ
四十二 はじめての舞台
四十三 ヴェスヴィオの恋の炎
四十四 ある士官の影
四十五 恩人との再会
四十六 いましめの言葉
四十七 ペストゥムの少女ララ
四十八 アマルフィのできごと
四十九 たつまき
五十  夢幻の洞窟
五十一 遭難
五十二 ローマへ
五十三 招かれざる教師
五十四 フラミーニアの君
五十五 エリザベッタ
五十六 ドメニカ
五十七 さらばローマ
五十八 老女フルヴィア
五十九 ヴェネツィアへ
六十  水の都ヴェネツィア
六十一 嵐の海
六十二 ローザとマリア
六十三 しおれたバラと白鳥
六十四 アヌンツィアタの手紙
六十五 ヴェネツィアからミラノへ
六十六 ララとマリア
六十七 グロッタ・アッズラ
あとがき

●ユダヤ教徒(140頁)
そのころローマの町には、ユダヤ教徒が自由に住むことはゆるされず、特別居留地区が設けられ、その住む場所をきめて囲いこみ、夕暮れになるとその門を閉じ、番兵を置いて人の出入りを禁じていた。
●追剥(298頁)
ローマとナポリの間ほど、追いはぎに便利なところはないだろう。奥が知れぬほどつづくオリーブの林、所どころに開ける自然の洞窟から、昔、ひとつ目の巨人が築いたという長壁の遺跡まで、身を隠し人をうかがうのに都合のいいところばかりである。
●生きる(330頁)
時は駆け足で過ぎていく。そして人はめいめい自分の重荷を背負って生きるのだ。心配するな。鉛のような重さもあれば、玩具にたがわぬものもある
●即興詩(536頁)
わたしも父の顔を知らず、おさなくして母を失った。知らず知らずのうちに、自分の生い立ちを、この残された子どもたちに重ねていたかもしれない。人それぞれに人生があり、どのような境遇にも負けずに生きていかねばならぬことを、いつしか、自分に言い聞かせて歌っていたのだ。
(2013年11月6日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
文学史上最後の文語文といわれている森鴎外の雅文『即興詩人』(アンデルセン作)。安野光雅が5年の歳月をかけて完成させ、現代によみがえる19世紀の恋と青春の物語。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学
感想投稿日 : 2013年11月6日
読了日 : 2013年11月6日
本棚登録日 : 2013年11月1日

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