初稿があまりにも古い作品。
わたしがまだ2歳くらいの頃、当時の母と同じくらいの年齢の作者は、この作品を描いた。それは昭和62年頃。
いじめの内容が古いのも納得。作品自体が古いのだ。
山田詠美さんの作品を、初めて読んだ。
わたしにはうまく説明できない。だから、この作品の感想を表現するために、解説の言葉を引用させていただく。
P211「新鮮かつ独特な肉体的感覚表現(五感と全身の皮膚で感じ取った現実感)」「たとえば男の体のある部分―胸なり手なり足なり踵なり―に魅かれ、そこから愛情が膨らんで行く、のような感情の形である」
誰かへの慕情を描くとして、それが「新鮮かつ独特な肉体的感覚表現」で描かれている。つまり、エロいのだ。「新鮮かつ独特」というのは、句読点の打ち方やひらがなの使い方、漢字の閉じ開き、比喩表現なんかを使って、感覚へと訴えかけてくる。
最近はSNSの普及で、様々な言葉遣いが溢れかえっているけれど、この繊細で美しい言葉遣いは、紛れもなく「新鮮かつ独特」である。
その美しさはまるで、好みの人と、ふ、とすれ違った時にハッとさせられるような、そんな美しさだ。
そして、それで言うと、「蝶々の纏足」で描かれる麦生と、「風葬の教室」で描かれるアッコ。彼らはきっと、学年一の美男子というわけではなく、主人公の感性だからこそ、それを魅力と感じ取れる何かを持っている、そこはかとない色気を纏っている二人である。
その主人公は。
P214「『蝶々の纏足』も『風葬の教室』も、主人公の少女は大変似ていて、それはほかの作品の大人の主人公たちにも通じる。要するに年齢に関係なくみんな大人で、個人的で、独自的で、生意気で、戦闘的でナルシシストだ」
「蝶々の纏足」の瞳美も、「風葬の教室」の杏も、自分自身の感覚をとても大切にしていて、どんなに周囲からの負の圧力が強くとも、絶対にぶらさない芯の強さがある。
より印象に残った「風葬の教室」は一人称で語られる作品だ。いじめを一人称で描くことで、強烈な臨場感を持たせてくる。だからこそ、そこで描かれる苦痛には、リアルな痛みが伴う。思春期の、自立と痛み。
そして今日は、刺すように痛い寒さ。
メリークリスマス!
- 感想投稿日 : 2021年12月25日
- 読了日 : 2021年12月17日
- 本棚登録日 : 2021年12月25日
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