蝶々の纏足・風葬の教室 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1997年2月28日発売)
3.66
  • (478)
  • (470)
  • (1037)
  • (50)
  • (10)
本棚登録 : 4761
感想 : 467
3

初稿があまりにも古い作品。
わたしがまだ2歳くらいの頃、当時の母と同じくらいの年齢の作者は、この作品を描いた。それは昭和62年頃。
いじめの内容が古いのも納得。作品自体が古いのだ。

山田詠美さんの作品を、初めて読んだ。
わたしにはうまく説明できない。だから、この作品の感想を表現するために、解説の言葉を引用させていただく。

P211「新鮮かつ独特な肉体的感覚表現(五感と全身の皮膚で感じ取った現実感)」「たとえば男の体のある部分―胸なり手なり足なり踵なり―に魅かれ、そこから愛情が膨らんで行く、のような感情の形である」
誰かへの慕情を描くとして、それが「新鮮かつ独特な肉体的感覚表現」で描かれている。つまり、エロいのだ。「新鮮かつ独特」というのは、句読点の打ち方やひらがなの使い方、漢字の閉じ開き、比喩表現なんかを使って、感覚へと訴えかけてくる。
最近はSNSの普及で、様々な言葉遣いが溢れかえっているけれど、この繊細で美しい言葉遣いは、紛れもなく「新鮮かつ独特」である。
その美しさはまるで、好みの人と、ふ、とすれ違った時にハッとさせられるような、そんな美しさだ。
そして、それで言うと、「蝶々の纏足」で描かれる麦生と、「風葬の教室」で描かれるアッコ。彼らはきっと、学年一の美男子というわけではなく、主人公の感性だからこそ、それを魅力と感じ取れる何かを持っている、そこはかとない色気を纏っている二人である。

その主人公は。
P214「『蝶々の纏足』も『風葬の教室』も、主人公の少女は大変似ていて、それはほかの作品の大人の主人公たちにも通じる。要するに年齢に関係なくみんな大人で、個人的で、独自的で、生意気で、戦闘的でナルシシストだ」
「蝶々の纏足」の瞳美も、「風葬の教室」の杏も、自分自身の感覚をとても大切にしていて、どんなに周囲からの負の圧力が強くとも、絶対にぶらさない芯の強さがある。

より印象に残った「風葬の教室」は一人称で語られる作品だ。いじめを一人称で描くことで、強烈な臨場感を持たせてくる。だからこそ、そこで描かれる苦痛には、リアルな痛みが伴う。思春期の、自立と痛み。

そして今日は、刺すように痛い寒さ。
メリークリスマス!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年12月25日
読了日 : 2021年12月17日
本棚登録日 : 2021年12月25日

みんなの感想をみる

コメント 6件

workmaさんのコメント
2021/12/26

naonaonao16gさん

「蝶々の纏足」「風葬の教室」の、感想、よかったです。自分より下の世代の感想が聴けて興味深かったです。

山田詠美の作品は、現代から見れば、少し古びて見える感じだけど………
作者の愛読する太宰治も、そんな感じがする………時代が変わっても普遍的な主題を扱っているため、著者の生き方を含め、時代を越えて愛される作品だと、naonaonao16gさんの感想を読んで思いました。

naonaonao16gさんのコメント
2021/12/26

workmaさん

こんにちは!
コメントありがとうございます^^

実は、山田詠美さんの「つみびと」を読みたくて、その前に彼女の作品を何か読んでみたいなと思ったんです。やはり「風味絶佳」かなぁ、とも思ったのですが、内容的にこちらの方が面白そうだったので、こちらを選びました。

また、彼女の生き方も全然知らなかったので、workmaさんのコメントをきっかけに調べてみました!
きっかけをくださりありがとうございます!
また他の作品も読んでいきたいと思いますので、また是非遊びにいらしてください^^

bmakiさんのコメント
2021/12/28

naonaonao16gさんの感性って本当に素敵ですね。
物事の捉え方が良い意味で面白いです。
この本は読んだことのない本ですが、naonaonao16gさんの感想を読むと俄然興味が湧いてきます(^-^)

naonaonao16gさんの世界観、素敵だなぁ〜(*^^*)

naonaonao16gさんのコメント
2021/12/28

bmakiさん

こんばんは!
コメントありがとうございます^^

そのように言っていただけて嬉しいです!!
でも、この作品をちゃんと理解したりとか、落とし込めたか、と言われると、なんとも言えません…

今年もお世話になりました!!
来年もよろしくお願いします\(^o^)/

workmaさんのコメント
2021/12/29

naonao16gさん

山田詠美に興味を持っているようなので、そんなあなたにおすすめを紹介します。山田詠美作品は多分ほとんど既読なので、そのなかから若い方向けに紹介いたします。
「つみびと」は、正直、自分は読んでてつらくなったので…(´;ω;`)

自分の本棚のブックリストにも紹介してある本のなかから………

「ぼくは勉強ができない」

高校生の男の子(ひろみ)が主人公で、彼と彼の周りの人々と物語。主人公も魅力的、かつ、周りの人々も魅力的。愛すべきひとびとの物語です。

「放課後のキー・ノート」

高校生の女の子が主人公(ぼくは勉強ができないよりあとに出版)

主人公は、どちらかというと地味な女の子。周りの人々と関わるなかで化学反応が起きて…徐々に…彼女がちょっとだけ不良?に…そして、魅力的に、なっていく…

今の子が読めば、昭和の時代を感じ、古く感じるかも?ですが、

高校生くらいの子が、学校で感じている気持ちは、今も昭和も それほど大きくは違わないかも…?

と思ったので、おせっかいながら紹介させてもらいました(^o^;)

興味があれば、どうぞご自由に~

おせっかい紹介文なので、返信不要です(^ー^)

naonaonao16gさんのコメント
2022/01/02

workmaさん

あけましておめでとうございます!

山田さん作品のご紹介、ありがとうございます!
長く活動している作家さんなのでたくさん作品があり、何を読めばいいのか分からなかったので助かります!!

実は、今読んでいる村田沙耶香さんのエッセイ(村田さんはわたしが大好きな作家さんです)に、山田さんの作品がかなりあり、こんな偶然も存在するのか!これは2022年まじで読んでいかないと!と、うずうずしているところでございます!
もちろん「つみびと」も読んでいきたいです!

おすすめありがとうございます!
本年もどうぞよろしくお願い致します!

ツイートする