2022.2記
以下、ネタバレが気になる方はスルーください。
「ドライブ・マイ・カー」の感動が冷めやらず、劇中劇として演じられるチェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」を読んでみているのだが、翻訳が古くいささか難渋した。
イメージだが、例えば「おい、イワン、あの娘すごい美人だな!」で済むところが、「じっさいどうだい、イヴァン・イリーイチ、あのむすめときたら全体、たいした器量良しじゃないか?」みたいなノリである。映画の中のあの自然な訳語は、なにか新しい翻訳版から持ってきたのか、それとも脚本家の力量なのか。
それでも、「ね、ワーニャ伯父さん、生きていきましょうよ、長い、はてしないその日その日を、いつ明けるとも知れない夜また夜を、じっと生き通していきましょうね。」(新潮文庫p238)、からはじまるラストシーンでは映画と同様にやはり涙がこぼれてしまった。
「今のうちも、やがて年をとってからも、片時も休まずに、人のために働きましょうね。そして、やがてその時が来たら、素直に死んで行きましょうね。あの世へ行ったら、どんなに私たちが苦しかったか、どんなに涙を流したか、どんなにつらい一生を送って来たか、それを残らず申上げましょうね」(同)。
信じれば夢はかなう、というストーリーを皆が求めているのが今という時代なのに、このことばがこれほどまでに胸に訴えかけてくるのはなぜだろう、、、
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年5月14日
- 読了日 : 2022年5月14日
- 本棚登録日 : 2022年5月14日
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