第二音楽室

著者 :
  • 文藝春秋 (2010年11月15日発売)
3.56
  • (52)
  • (153)
  • (170)
  • (24)
  • (3)
本棚登録 : 932
感想 : 213
5

YAを書く作家のなかでも、佐藤多佳子は私のお気に入りです。
デビュー作の『サマータイム』などをはじめ、初期にも少女の揺れ動く感情をピアノに寄り添わせながら描いた作品がありました。

『第二音楽室』には、2005年から2009年までに雑誌に掲載された、思春期の少女たちを主人公とする、音楽と学校をめぐる4つの物語が収められています。

多くの人が小学生や中学生のときに手にしたであろうピアニカやリコーダーという身近な楽器や、音楽の時間の歌のテストを素材にしているので、読み始めるとすぐに、すっぽりとその時空にすいこまれてしまいます。女の子の気持ちなんて、わかりたくてもまったくわからなかった私でさえ、彼女たちに感情移入し、胸がしめつけられたりしてしまうのです。

なかでも心を揺り動かされたのは、「裸樹」です。
中学でいじめをうけたため、高校では何とかして自分の居場所を見つけ出そうとする主人公の姿は痛々しい。
しかし、そんな彼女の心は、公園で偶然聴いたギターの弾き語りの歌によってひらかれ、バンドのメンバーとの確執も乗り越えていきます。

バンドとは不思議なもので、同じ曲を演っているのに、ごくごくたまに気まぐれな神さまがやってきて、ものすごい演奏をしてしまうことがあります。うまいとかへたとかではなくて、メンバーの気持ちがまさにひとつになっているのを感じるのです。

楽器が弾けなくても、音楽をあまり聴かない人でも、この本ならば十分に楽しむことができると思います。もちろん音楽好きには”お薦め”。ぜひ読んで欲しい。

『第二音楽室』のあとに、『聖夜』という作品も出版されました。これは、珍しい高校のオルガン部のお話。こちらも、もちろんお薦めです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: YA
感想投稿日 : 2013年6月17日
読了日 : 2013年6月17日
本棚登録日 : 2013年6月17日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする