丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2013年6月26日発売)
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感想 : 945
4

・9月21日に読み始め、25日に読み終えました。

・よかった~。直接王とは関係ない人たちの中で国とは王とはどんな存在なのかが様々でおもしろかった。


「丕緒の鳥」

・倦んだ男は色っぽいですね…… 祖賢のこととか簫蘭のこととか、予王に届いたのに受け入れてもらえなかったこと、すべてが無意味に思われて陶鵲をつくる気力ももう無い。新しいものをつくれないから過去の陶鵲にするしかない、でも予王の陶鵲も悧王の陶鵲も気が進まない…… という、もうどうでもよいと思っているはずなのに、ほんとうに投げやりにはなれない矛盾が良い。人間らしい。
・そのあと、自分が今まで何も聞いてこなかった簫蘭の陶鵲をなぞって青江と構想を練るとこ…… 切な良い。
・そ れ で 陽 子 様。 丕緒が陽子様に自分と青江と簫蘭の気持ちが通じたと感じたときでなく、次の機会も楽しみにしている、できたら私とあなただけで見たい、と言われたときにああ次のはこういうのがいい、と思えたのがよかったな~。
・こうして王はいろんな人にとっての希望になっていくんだなと思った。ほんとに様々の思いを抱かれて背負っているんだな。
・あと青江がかわいかったです。いじらしい……


「落照の獄」

・ひどいね。絶対にどちらかに決めないといけないのに、最適解がそのどちらかどころかどこにも存在しないという堂々巡りをずーーーーーっとやっててホントにみんな疲れてる。家庭のこと、狩獺自身のこと、被害者のこと、国のこと王のこと民のこと……、と瑛庚が板挟みどころかこう、四方八方を囲まれてて……
・「死刑は廃止すべきか否か」という小論文的なものを高校のときにやったことを思い出した。実際に議論をしたわけではないので、私以外の人がどんなことを書いていたかはわからなかったけど、ディベート的なことをしていたらどうなってたんだろうなー。
・瑛庚たちは弑刑を決めていろんな人から感謝され、いろんな人からどうしてやめなかったと言われるんだろうか。これから傾いていく国の中で今日の決断のことをなんども思い出すんだろうな。
・最後に「やむなし」と付けたところに最後の抵抗を感じた。だーいぶモヤ~とする話だったけど、こういうのも好きですね…… 王には何が起こってたんだろうか。


「青条の蘭」

・これはとにかく読了後に「よかったね~~~……」と思った。東の海神~くらい?ちょっと前?かな。とにかくすごい荒廃具合で、全然雁だと気づかなかった。
・標仲にとっては、包荒と興慶から託されたものを最後まで自分の力で届けられなかったことに悔いが残ると思うけど、自分たちが守りたいと思った、同じ土地に生きる人たちの手を渡って渡って王のもとへたどりついたことはずいぶん大きな意味が生じるね。
・標仲が背負ってきた、包荒と興慶の気持ちや山や国や民や、この先の未来が詰まった重い重い笈筺が、標仲の手を離れたあとに「なんとなく国のため」「真実はわからないけどきっと希望になるもの」みたいな曖昧さで標仲が背負ってきたときよりは確実に軽くなるとこ、標仲が言っていたように確かにどれだけ重大なことかは伝わらないんだなと思うけど、それでもしっかり届けられたからな……
・病気に対する薬が、狩る方法がなければ天が与えてくれる、北から始まったから北の野木に実る、というのはやっぱなんというか…… 十二国記の「天」ってめちゃめちゃシステマティックだよなあ。ふしぎ。そういうもんなんだろうけど、ふしぎだな~。


「風信」

・じんわり良かった。これまでの3篇にもだいぶ辛いシーンはあったけど、しっかり血なまぐさくてびっくり。女を追い出すってこれまでにいろんなところでいろんな描写で見てきたけどこんな目についた者から殺すみたいなこともやってたの!?シンプルにひどいね。
・序盤の強烈な描写と外界と隔絶されたような嘉慶の苑囿のギャップがまた残酷なようにも救いのようにも感じる。実際、嘉慶たちは兵士に一矢報いることも戦を止めることもできないし、究極それは蓮花も大半の人もそうなんだよな。
・蓮花の家族や幼なじみ、盧の人々が殺されたことは続いているけど、熊蜂が花粉をあつめるところだったり、燕が子を育てるのを見て涙できるのは確実に救いではあるはずだと思う。
・支僑がじきによくなる、辛い時代が終わると断言したところ、かっこよかったな…… 人それぞれ、世界との戦い方があるんだなと改めて思った。
・あと今までの3篇は「王にわかってもらえない」「王のことがわからない」「王にたどりつけない」と煩悶していたけど、「風信」は「そういや王は斃れたんだっけ」という真反対な向き合い方でまたおもしろかった。いろんな人々がいる。


・良い短編集でした! これから続きを読んでくなかで小休止というか、視点を一旦別のところにうつして世界を見れたのがよかったね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年9月25日
読了日 : 2022年9月25日
本棚登録日 : 2022年9月21日

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