本屋さんで本当にあった心温まる物語

著者 :
  • あさ出版 (2012年11月16日発売)
3.72
  • (33)
  • (37)
  • (43)
  • (8)
  • (3)
本棚登録 : 439
感想 : 60
3

本屋さんで実際にあった28のストーリー。
舞台となった本屋さんは北海道から沖縄まであり、語り手は書店員、店主、作家、編集者、お客さん(中学生・高校生・OL・主婦)と、幅広い。
それぞれのストーリーの扉はさくら色のページで挿絵も多く入り、全体に温かな雰囲気だ。

東日本大震災の翌年に出された本で、宮城や福島の本屋さんは被災した話から語る。
「少年ジャンプ3.19日発売16号 読めます!一冊だけあります」
「激励の言葉より本を売る」
どちらも本屋さんの掲げた渾身のポップ。
気力を奮い立たせて開けた書店に、多くの人が本を求めて集まる場面が目に浮かぶようだ。

「史上最大の閉店物語」という話もある。
「書店員さんが本当に売りたかった本」の新宿ジュンク堂店の話だ。
伝説となった閉店の舞台裏を違う形で読むことになり、本が本を呼ぶ小さな縁を感じる。
ついでだからと「幸福書房」と「さわや書店」を探したら、ちゃんと巻末の協力店の中に名前を連ねているのを見つけ、少し気持ちが高揚した。

短いながらも思わず感心するような話もあり、微笑ましいものもあり。街の本屋さんだからこそ生まれた話の数々に、ふわっと温かくなる。
全てのストーリーが終わった後で、著者の「モテる書店のつくり方」が載っていて、ここのアイディアが面白い。
本書は本屋さんへのエールになっているが、読むと本屋さんに行きたくなるかもね。

図書館はすぐ傍でも、本屋さんはちょっぴり遠い我が家。
どちらかと言えば、図書館でお世話になりっぱなし。
「この本、すごく面白かったです。どうもありがとう!」と言って返却すると、いつも司書さんが相好を崩して喜んでくれる。
「どんなところが面白かったですか?」と聞かれて、その場で1分間トークに及んだり。
本の話は、年齢も職業も性別も出自も、簡単に超えてしまう力がある。
さくっと読んで、本の良さを再確認できる一冊だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本にまつわる本
感想投稿日 : 2020年7月19日
読了日 : 2020年7月19日
本棚登録日 : 2020年7月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする