ばるぼら 下 (角川文庫 ん 11-32)

著者 :
  • KADOKAWA (1996年12月1日発売)
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本棚登録 : 170
感想 : 14
5

【あらすじ】
美倉洋介がかつて都会の排泄物とさえ形容した、あのさえないフーテン娘バルボラが仮面を脱いで正体をあらわした。それは、あまりにもみごとな”女”への変身であった。バルボラは現代に生きる魔女なのか?美倉はバルボラと結婚を決意したが、式の当日思わぬ邪魔が入ってしまった…。バルボラの消えた美倉の部屋は空虚だった。そして彼の名声も急速に失墜していく。(169文字)

【感想】
上巻よりも、さらにおもしろかった。
『ブラック・ジャック』のようなエピソード形式だった上巻にくらべ、下巻ではすべての章がひとつの物語となる構成になっている。バルボラの設定やオチの付け方など、なんだかんだで手塚治虫の話は理に落ちる。不穏さや謎に満ちたまま、不条理や崩壊に進んでいってもおもしろかったと思うが、この作品は理に落ちてくて嬉しかった。
バルボラが”女”を見せるシーン、とてもよかった。一瞬で顔や姿が変わってしまうバルボラ。女を見せるときに「正体をあらわした」と表現するのがおもしろい。普段女性は自分の中の”女”を隠しているんだろうか。どうだろうか。手塚治虫が男だからこう表現するのだろうか。他の作品でも同じような表現をみたような気がする。
第12章「回帰」冒頭の冷めた夫婦生活が異常にリアル。なにかしら手作業をしながでしか会話をしないのがリアル。決して夫婦二人は顔を合わせて会話しない。
この作品は手塚治虫のキャリアが低迷していた時の作品だ。その時代に、見向きされない芸術、作者が死んでもなお生き続ける芸術、そして最後には作品がヒットする作者を描いていたと考えるととてもツラくなった。(493文字)

【メモ】
・手塚治虫のなかで暴力と言えば、平手打ちなんだるか?やたらと出てくる。
・結局、バルボラとばるぼらの使い分けはわからなかったなぁ…
・上巻でもあったが、歪んだビルやタイルなどは表現主義の影響なのかな?(100文字)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2018年7月13日
読了日 : 2018年7月17日
本棚登録日 : 2018年7月6日

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