あまりに風変わりな一族の面々が揃うヨーク・ハッター家。ヨーク・ハッターの自殺体が見つかり、その二か月後にはハッター家で毒殺未遂事件が起こる。警察は元俳優であり過去、殺人事件を解決した経験を持つドルリー・レーンとともに事件の真相解明を試みるが…
ミステリ史上屈指の名作との誉れの高い作品ですが、自分はなかなか読んできませんでした。というのも、エラリー・クイーンの作品はロジック重視のイメージが強かったので、ミステリに人間ドラマとか社会性がプラスされてる作品の方を読んでるうちについつい後回しになってしまっていたからです。
しかしいざ『Yの悲劇』を読んでみるとかなりの面白さでビックリ! ヨーク・ハッター家の設定がとてもゴシック的で気に入ったという点もあると思いますが、
不可思議な凶器の謎、殺人事件後も起こる事件、明らかになるハッター家の真実と、ロジックや証言一辺倒にならない展開が面白かったからだと思います。
ロジックという点では前作『Xの悲劇』が上な印象ですがインパクトと物語性ではこの『Yの悲劇』が上の印象です。
事件の真相もまた奇怪です。きちんと論理で事件自体は解明されるものの、奇怪と論理、この二つが見事に合わさっているからこそ、この作品は名作として名を残したのではないかと、と思います。
そして何と言ってもレーンの下した最後の決断…。ハッター家の事件の真相や犯行に至るまでも悲劇的かもしれませんが、彼がこの事件に関わってしまったこと自体がまた悲劇だったのかもしれません。そうした寂寥感もこの作品が名作として語られる所以ではないでしょうか。
ミステリ好きなのに『Yの悲劇』を読んでいないという胸のしこりがようやくとれたのにホッとするとともに、早く読んでおけば良かったなあ、と心底思いました。
- 感想投稿日 : 2015年2月11日
- 読了日 : 2015年2月5日
- 本棚登録日 : 2015年1月30日
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