新装版十二国記八作目。
戴の将軍李斎は片腕を失う怪我を負いながら景王陽子の元を訪れる。戴は王、麒麟ともに行方不明となり、偽王が独裁を振るっている。李斎は戴を援助してもらうために慶を訪れたと語る。陽子は戴の麒麟、戴麒を探す決心をするが……。
十二国記を読んでいると「なんで十二国の世界の摂理はこんな理不尽なのだろう」と思うことがしばしばあります。今作もそう思う個所はしばしばあって、正義心から偽王を討つため兵士を挙げて他国乗り込むこともできない、もしすれば国に確実に災いが降りかかる、という記述もあります。登場人物たちはそうした十二国記内の「天の摂理」に苦心します。
それに文句を言っても始まらない、摂理の中でどうやって自分たちができることを精一杯やるか、そう考え行動する陽子たちの姿は、現実世界を生きる自分にも考えさせられるものがありました。厳しい現実の中でも精一杯生きることが十二国記のテーマの一つでもあるように思いますが、そのことに改めて気づかされました。
また現代に近い時代の蓬莱出身ならではの陽子のアイディアや、それに翻弄され動かされる延王や周りの人々の姿もよかったです。陽子の起こす新しい風がいつか十二国の閉塞感を打ち破ってくれるのではないか、と思わさせてくれます。今回の事件はその第一歩だったようにも思います。
李斎の叫びも切なかったです。何のために天はあるのか、天にとって自分たちは何なのだ、という叫びに自分もとても共感したのですが、それに対する陽子の言葉にも心を打たれました。人を救うことができるのはやはり人なのだと思います。
捜索終了で話は終わるのかな、と思いきやその後の李斎への問いかけ、陽子に忍び寄る魔の手、最後の決断など読みどころがたっぷり! 話を常に動かし続け、読者である自分にもさまざまな問いかけをしてくるのはさすが「十二国記」だなと思いました。
戴を含めた十二国記のその後が気になるところですが、これは完全新作の次作で語られるのでしょうか。楽しみに待ちたいと思います。
- 感想投稿日 : 2014年4月17日
- 読了日 : 2014年4月15日
- 本棚登録日 : 2014年4月11日
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