純粋理性批判 (3) (光文社古典新訳文庫 Bカ 1-4)

  • 光文社 (2010年9月9日発売)
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感想 : 16
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この巻の前半に出てくる「図式」(シェーマ)という概念は、なかなか面白いと思った。
その後に続く思索は、そろそろ難しくなってきており、厳密なあまり退屈を感じないでもない。
「アプリオリ/アポステリオリ」という区別や、「感性/知性/理性」といった区分に関しては、当時のカントにとっては重大だったかもしれないが、現代の私たちにとっては、そんなに緻密に区別できるものでもないし、そうすることにさほどの意味も見いだせない。
やはりカントもまた、時代の「言語」の内側にいて、別の言語空間から眺めると必然性・絶対性を欠いた思考遊戯をやっているように見えてしまう。
「物自体」は人間には知り得ないし、感性をとおして対峙せず、知性のみから把握された知(概念)は空虚である、とカントは言うが、たとえば物質の分子-原子-素粒子へと突き進んでいった自然科学の知見の歴史そのものによって、カント的思考の枠組みは一部乗りこえられてしまっている。
とはいえ、時代の制約を追いながらも、力強く厳格なカントの思考はやはり天才的なものであって、イギリス経験主義をはるかに超えてラディカルな近代哲学をきりひらいた事実の重要さは、いささかも損なわれることはない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学・思想
感想投稿日 : 2012年3月3日
読了日 : 2012年3月3日
本棚登録日 : 2012年3月3日

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