意味と無意味

  • みすず書房 (1983年1月7日発売)
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感想 : 1
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メルロ=ポンティ初期の論文集。セザンヌへの興味、ゲシュタルト心理学への接近は相変わらずだが、この時期はサルトルやボーヴォワールと共に雑誌をつくり、実存主義陣営の一角としてはりきっていた時期のようだ。サルトルを擁護する文章も幾つか載っている。
「映画と新しい心理学」ではゲシュタルト心理学を援用しつつ、映画に関しては「映画は映像の総和ではなく、時間的形態だ」(P79)といった刺激的な知見があらわれている。
第3部は「政治」を巡るエッセイが集められており、こういったものは『シーニュ』の後半にも多数あったが、メルロ=ポンティの政治論にはあまり興味がない。というか、当時のフランス、ヨーロッパの情勢に詳しくないので、あまりついて行けない。
彼はマルクス主義にしょっちゅう言及しているが、批判的に距離を取っている部分もあって、「マルクス主義者」というレッテルを貼ることはできない。メルロ=ポンティにはいつも、こうした「曖昧さ」があって、この人の思想をわかりにくくしていると思う。
興味深かったのは「戦争は起こった」で、1945年、終戦直後に発表された文章であるが、ドイツに占領されたパリでの状況をなまなましく語っており、そこに出くわした一人の知識人としての戸惑いを正直に表明している。
このへんの(現在につながる)20世紀ヨーロッパの歴史というものも、ちゃんと把握しておきたいなと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学・思想
感想投稿日 : 2011年8月17日
読了日 : 2011年8月17日
本棚登録日 : 2011年8月17日

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