「あなたがそばにいるときに看取られながら死にたい」
自由死を望む主人公の母。それを許さない息子。
死の一瞬前に何を感じていたいか。どこで誰といたいか。
死ぬ間際に誰を思い出すだろうと考えたことはあったけれど、このことは考えたことがなかった。
最愛の犬と猫はもう先に逝ってしまったから臨終の際には居てもらえないし、やはり、息子に手を握って送って欲しい、そして出来たら最期の時くらいは優しい言葉をかけてほしいと思った。その風景を想像したら何だか泣けてきた。
一日も早い自然死を私はここ数年願っている。それくらいだから、自由死を望む気持ちはとてもよくわかる。自由死が受け入れられる世の中なら、もうどうしても生きているのは無理と感じるその日まで、安心して生きられるのではないか想像する。
でも、それは私個人の狭い世界での安心であって、世の中全体では自由死が認められると起こってくる様々な問題があるのだろう。その一部がこの本に書かれているように。
この問題は、世の中全体で一つの答えを出すのは無理だと思う。結局は個々がどう受けとり決意するか。議論し合うことは必要だが、今の日本が自由死を選ぶ権利が許されていないように、自分の最期を決める意思を否定する権利は誰にもないのではないかと思う。
心に残った文…
○死が恐怖でなくなればなくなるほど、相対的に、僕たちの生は価値を失ってしまうだろう。この、どうせいつかはなくなる世界を良くしたいという思いも。一体、この生への懐かしさを失わないまま、喜びとともに死を受け入れる事は可能なのだろうか
○今、僕の人生を思って、心が掻き乱されるような人間は一人もいない。その事実は、僕のこの世界そのものに対する愛着を削ぎ続けてきた。
○『俺は、今でもおかしいと思ってるよ、この(格差のひどい)世の中。』僕はそれに何度でも同意する。ただその世の中を、僕は彼とは違った方法で変えたかった。それができるなら、僕はせっかく良くなった社会を、大切にしたいと思うだろう。それを壊してはいけないと心から信じられるはずだった。
- 感想投稿日 : 2023年2月4日
- 読了日 : 2023年2月4日
- 本棚登録日 : 2021年12月16日
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